(807)骨格の弾けて戻る嚏かな/川田果樹(2003年~)
嚔。クサメと読む。くしゃみの古い言い方で、冬の季題だ。さあこの句、まさに大くしゃみ。爆発音を発して身体が前につんのめり、直ちに元の姿勢に戻る様子がいきいきと一句になった。他人の大くしゃみを観察しているというよりは、自画像的な諧謔(かいぎゃく)と見たい。と言うのも、下五の切れ字「かな」は俳句全体に余…
関連リンク
- ・(806)待春(たいしゅん)の日ざし溢(あふ)るる無縁墓地/鹿野佳子(1934年~)
- ・(805)冬帽を脱げば南に癖毛立つ/今井聖(1950年~)
- ・(804)マフラーを巻き寂しさを戒める/野名紅里(1998年~)
- ・(803)約束はいつも待つ側春隣/浅川芳直(1992年~)
- ・(802)枯木ことごとく阿修羅となりて立つ/遠藤若狭男(1947~2018年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。