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温かな給食、児童ら支える 石川・能登町9校で石巻地方の有志団体提供 本紙記者被災地ルポ

大鍋で調理したトマトスープを配膳するチームのメンバーら=1月31日正午ごろ、能登町松波中
笑顔でスープを飲む1年生たち。野菜が嫌いだという児童も完食していた=1月31日午後0時30分ごろ、松波中
調理場所近くに貼られた配膳する数の確認表=1月31日正午ごろ、松波中

 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県能登町で、石巻地方の有志らでつくる任意団体「宮城災害支援KIBOTCHA(キボッチャ)チーム」が小中学校の給食を提供している。校舎やインフラが被災して調理ができなくなった学校に代わり、被災地での炊き出しの経験やノウハウを生かし、授業を再開した子どもたちを支えている。(及川智子、相沢春花)

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 長机に大鍋が並んだ昇降口の「調理場」で、チームのメンバーが手際よく野菜を煮込んでいく。かき混ぜながら2時間加熱すると、辺りはトマトスープの香りに包まれた。

 同町松波中では1月31日、校舎が被災して使えないため同校で授業を受ける松波小の児童や教職員の分も合わせ、約120人分を用意した。チームは大鍋やガスコンロを持ち込み、午前9時半ごろから調理を開始。トマトやジャガイモ、ニンジンなど5種類の野菜と豚肉を二つの大鍋に入れた。トマトスープが完成すると、栄養教諭が食材の温度を測り、火が通っているかを確認した。

 各教室に運ばれると、児童らがおいしそうに頬張った。2年の石田道仁君(8)は「酸っぱくておいしかった。遠い所から来て作ってくれてうれしい」と完食した。

■町から要請 調理

 チームは東松島市野蒜の防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」を運営する貴凛庁を中心に構成。地震発生後の3日に被災地に入り、町内の避難所などで炊き出しを実施していた。給食提供は町から要請を受け、学校が再開した22日に始めた。

 町内の全9小中学校には計約900人の児童生徒が在籍する。チームは毎日、1~4人の4グループが活動し、各校で1日おきに昼食を提供している。

■東松島で下準備

 野菜や肉は東松島市産を中心に支援で集まった食材を活用するほか、チームの資金で調達する。野蒜地区の住民や全国から集まるボランティアが、キボッチャで野菜を切るなどの下ごしらえをし、片道12時間ほどかけて車で運ぶ。町内にはキボッチャ社員や他の支援団体のメンバーら約10人が滞在し、各校を回っている。

 松波中では現在、全校生徒39人のうち約30人、松波小は81人中約70人がリモートを含めて授業に出席する。中には避難所から通う生徒もいる。両校の給食は従来、松波中で作っていたが、地震の影響で調理設備が使えなくなった。仕入れ業者からの食材調達も難しくなり、下水道も復旧していない。

■ノウハウ生かす

 災害支援の経験が豊富なチームは、炊き出しの道具やノウハウを活用し、できたての料理を給食に加えている。クリームシチューや豚汁などメニューも毎日変える。同校栄養教諭の高橋未希さん(25)は「支援物資だけだと栄養面が偏ってくる。野菜がたくさん入った食事はありがたい」と感謝した。

 給食の提供は2月末までを予定する。チームのメンバーでキボッチャ顧問の井出方明さん(67)は「できるだけ栄養が取れて温かい物を提供したい」と語り、今日も子どもたちに給食を届ける。

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