能登での車貸与、本格化 石巻・日本カーシェア協、ニーズ踏まえ奮闘 本紙記者被災地ルポ
能登半島地震の被災地で、石巻市の一般社団法人日本カーシェアリング協会が、被災者への車の貸与を本格化させている。石川県七尾市に加え能登町にも拠点を開設。車を無償で貸し出し、被災家屋の片付けで出る粗大ごみの運搬などに役立っている。災害廃棄物が増える地震直後の復旧期、ニーズに応えようと車の確保や受付業務に当たる。(及川智子、相沢春花)
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1月30日午前9時半ごろ、七尾市和倉温泉の近く。協会の拠点には受付開始の10時を待たず予約した利用者が次々と訪れた。
受付ではレンタカーのように必要事項を記入し、使用する車をスタッフと一緒に確認。家の片付けや生活の足に使おうと、15分ほどで手続きを済ませて足早に去った。
そのうちの一人、七尾市田鶴浜町の無職松本孝一さん(67)の片付けの様子を見せてもらった。
借りたのは熊本ナンバーの軽トラック。松本さんは手続きを終えると、自宅と同じ地区にある実家へ向かった。被災した実家の家財道具を災害廃棄物の仮置き場へ運ぶためだ。
住宅密集地に入り、細い路地を進む。周囲には倒壊した住宅や屋根にブルーシートが掛けられた家屋が目立つ。その先にある実家前に軽トラを着けた。2階建て住宅は築55年ほど。倒壊こそ免れたものの、壁が崩れて柱が傾き、1階部分の天井が落ちている。
松本さんは弟と2人で大きな冷蔵庫や食器棚、げた箱などを軽トラに積み込んだ。ようやく荷台に積み終わると、ロープを掛けてしっかりと固定した。
これまで自家用車を使っていたが、大きい家財道具を運ぶには軽トラが必要になったという。「軽トラックを持っている人がいても、みんな使うので貸してとは言えない。借りられて助かった」。松本さんはほっとした表情を見せた。
協会は七尾市での貸し出しを15日に始めた。29日までの貸出件数は43件、申し込みは504件に上る。
家屋倒壊が多発した能登半島地震。松本さんのように大型の荷物を運ぶ人や、倒壊した家屋の下敷きになり車が使えなくなった人、ボランティア団体が使うケースがあるという。
協会の担当者は「災害廃棄物の仮置き場の開設が進めば、さらに需要は増える」とみる。2016年の熊本地震や17年の九州北部豪雨を上回る運用規模になる見込みだ。
ニーズが能登半島の広範囲にあることを踏まえ、27日に能登町内に拠点を開設。2月には輪島市にも拠点を開き、貸し出しを始める予定だ。
全国各地にある協会の拠点から70台が集まった。計179台を確保済みで、300台の確保を目指す。事務局長の西條里美さん(35)は「被災地は元々車が必要な地域で、順番を待つ人は約300人いる。希望する人にできるだけ行き渡るようにしたい」と話す。
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