(821)料峭(れうせう)や獣のごとく束子(たはし)ある/正山小種(1995年~)
「料峭」は春風が肌にうすら寒く感じられるさまを言う。マニアックな季題だが、「春寒」のこと。風の寒さの中でも、お日さまのぬくもりはやはり、春。そして、春は動物たちが冬眠から覚め、虫たちが穴を出てくる季節。ポンと置かれた束子も、まるで冬眠から目覚めた動物たちのように動き出しそうだ。「獣のごとく束子ある…
関連リンク
- ・(820)春潮の遠鳴る能登を母郷とす/能村登四郎(1911~2001年)
- ・(819)春愁やくらりと海月くつがへる/加藤楸邨(1905~1993年)
- ・(818)わが机上バレンタインのはや来てゐ/後藤比奈夫(1917~2020年)
- ・(817)メールする蔦の芽のやわらかいこと/神野紗希(1983年~)
- ・(816)はからずも粕汁に酔ふ夜の獄/かりんとう(生年不詳)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。