(822)ストローを銜へるひとりづつ霞/鴇田智哉(1969年~)
空気中の水分が粒子となり、周囲をけぶらせています。靄(もや)や霧と似た現象ですが、春は特に霞(かすみ)と呼びます。句の想像をしたとき、カフェのテラス席をイメージしました。飲み物のストローを銜(くわ)えると、ひとりひとりに霞が訪れるのです。霞はぼんやり見えることの比喩でもあります。本当の霞ではないで…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。