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ブルーインパルス搭乗記(7) ファンブレーク 4機密集隊形で右旋回

密なダイヤモンド隊形で右旋回するファンブレーク                        (静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

 私たちは鳴瀬川を左手に見て、鞍坪川に沿って右旋回に入ります。1番機から3番機はファンブレークの経路を進みますが、私の乗る4番機は高度を上げ、航空祭の会場となる飛行場北側の雲の様子を確認する天候偵察を行います。

 この間5番機はローアングルキューバン(離陸後超低空飛行で加速し急上昇宙返りをして滑走路に戻ってくる課目)を、6番機はロールオンテイクオフ(離陸後車輪を出したまま急上昇し、右に1回転して離脱する課目)を行っています。

■天候偵察し合流

 ファンブレークは密なダイヤモンド隊形(ひし形編隊)で、会場を右旋回する課目です。低高度を高速かつ密集した隊形での旋回のため演技の最中に進路を修正することはできません。このファンブレーク開始前に天候偵察を終了し、1番機から3番機に合流します。

 会場を右下に見ながら右旋回をしつつ高度を下げていきます。今まで間隔の広かったダイヤモンド隊形が徐々に狭くなっていき、翼と翼が重なるくらいに接近します。思わず悲鳴を上げたくなります。

 私の乗る4番機は1番機の真後ろに付きます。真後ろというよりは真下という感覚です。位置に付くと2番機にハンドシグナルを送り、2番機は1番機にそれをつなぎます。

 1番機の「ファンブレークレッツゴー」の指示で、今まで1番機の真後ろから2番機の右主翼の下に4番機の機首を突っ込む形になります。4番機が旋回半径の外側に位置した方が会場から見るときれいなダイヤモンド隊形に見えるそうです。

 Gスーツに空気が流入し軽く下半身を圧します。スロットルはダーティーローパスの時よりさらに大きく動き、エンジンの回転数が脈動のように変化します。後席の真下にある空調機のタービンもそれに同調し、うなりを上げます。

 操縦桿(そうじゅうかん)は赤ちゃんをあやすガラガラのように忙しく動きます。地上では主翼と主翼の間隔が1メートルとアナウンスされますが、机上での図面に補助線を引けば1メートルですが、実際は前後に1機分の長さプラス高度差があるので1メートル以上あります。ただし操縦席から隣の機体まで息が詰まるほどの間隔しかなく、悲鳴を上げたいところをグッと我慢します。

■機体振動激しく

 操縦者の激しい息遣いの中、2番機の主翼の補助翼が忙しく動いているのが目前に迫ります。空気の層は一定ではなく風の層も違います。空気密度が非常に高い超低空のため空気の層の違いによる機体の振動は激しく、4機いっぺんに弾かれたり1機ごとが別々に弾かれたりするのをねじ伏せながら右旋回をします。

 見覚えのある景色が一瞬のうちに後方に飛んでいく中で上に1番機、両側に2番機、3番機に囲まれ逃げ場のない状態で操縦者を信じるしかない緊張状態が続きます。ファンブレークが終了し、密の状態が解けるとホッとします。そのまま三陸沿岸道の鳴瀬大橋を目指します。

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