(839)指に砂糖燕まつすぐ沈みゆく/野城知里(2002年~)
私が俳句を読んでいて面白いと思うことの一つは、描かれた景色と自分とが一直線に結び付けられてしまうような感覚になる。掲句に描かれているのは、外の景色の燕(つばめ)の急降下、指に付いた砂糖だけ。読み下すと(そんなことは描かれていないのに)砂糖壺(つぼ)に自分の指を埋(うず)めたくなる衝動すら覚えてしま…
関連リンク
- ・(838)折鶴のごとくたためる牡丹(ぼたん)の芽/山口青邨(1892~1988年)
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- ・(835)春風の重い扉だ/住宅顕信(1961~1987年)
- ・(834)雛の灯を消せば近づく雪嶺かな/本宮哲郎(1930~2013年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。