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能登半島地震 東日本大震災学ぶ、生かす(3) 火災 複数の災害、消火を阻む

住宅や商店などの焼け跡が残る輪島朝市の火災現場=2月9日
焼け残ったがれきの中に住宅の基礎が見える=2月9日、輪島市

 正月の平穏を襲った石川・能登半島地震。津波被害や原発の立地など、東日本大震災で被災した石巻地方との共通項は多い。震災では注目されなかった建物の倒壊や火災など、想定すべき新たな課題も表面化した。次の大災害で被害を最小限に食い止めるため、私たちに必要なことは何か。石巻地方と能登半島。二つの被災地の現状と課題を探った。(大谷佳祐、西舘国絵、漢人薫平)=6回続き=

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 広がり続ける火の手を前に、なすすべがなかった。

 石川県輪島市で千年以上の歴史がある「輪島朝市」。地元の海産物や野菜、伝統工芸品などが並ぶ、能登を代表する観光地であり、住民の憩いの場だった。人々が紡いできた全てを、地震と火災が壊滅させた。

■水と人員が不足

 地震直後、1カ所から出た火の手は瞬く間に広がり、店舗や住宅約300棟が焼け、東京ドームよりやや広い約4万9000平方メートルが焼失。倒れた家屋に閉じ込められた人々が犠牲になった。消火活動を阻んだのは、地震後の断水と津波、そして建物の倒壊だった。

 「人生でこんな火災は見たことがない。水と人員が圧倒的に足りなかった」。朝市の一画に住んでいた同市消防団の川端卓団長は、無念さをにじませる。

 電気配線から出たとみられる火は、密集する木造家屋に次々と燃え移った。建物が倒れ、道路がひび割れる中、現場にたどり着けた消防署員と消防団員の計約50人が消火を試みた。

 しかし、水道管の破損による断水で、周辺約10カ所の消火栓は使えない。津波による引き潮のせいか川の水はほとんどない。海水を頼ろうにも津波警報が発令され、海に近寄れない。防火水槽から水を引くにも、倒れた建物が道をふさぐ。

 ようやくたどり着けた防火水槽からポンプ車のホースを何本もつなぎ合わせて放水を始めたが、炎は勢いを増す一方。「水圧が足りず、歯が立たなかった」と川端団長はうつむいた。

■石巻地方も類似

 地震、津波、火災…。複数の災害が同時に起きる複合災害にどう向き合うか。

 石巻地方は、輪島との類似点が多い。海と川が近く、石巻市中心部をはじめ、狭い道路に木造建物が密集する市街地が点在。輪島と同様の災禍が発生する可能性は十分にある。

 「確実に使える水の確保は重要。今回の地震でより強く感じた」。石巻市消防団の後藤嘉則団長は危機感を強める。

■断水の対策、必要

 東日本大震災では能登と同様、断水で消火栓が使えなかった。震災以降は河川堤防ができて川の水を使う際に苦慮する恐れがある。橋が寸断されれば消火や救助に向かえない可能性もある。防火水槽の安全な場所への増設や、取水口を複数設けるなどの対策を指摘する声もある。

 後藤団長は「能登で起きた想定外を教訓として、行政と消防団などが今以上に連携して、被害を最小限に防ぐ取り組みを進めていくべきだ」と力を込める。

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