震災乗り越えピアノ復活 故鈴鹿さん、石巻時代に愛用 春潮楼に設置、ライブで活用
昨年7月、67歳で亡くなった俳優鈴鹿景子さんが高校まで過ごした石巻時代に愛用したピアノが、地元ミュージシャンの手によってよみがえった。東日本大震災の津波でピアノのあった実家は被災。7日に石巻市内でライブがあり、ピアノが演奏された。関係者は「天国の鈴鹿さんに懐かしい音色が届いたはず」と感慨深く聞き入った。
鈴鹿さんの実家は市中心部の橋通りにある3階建てだった。震災の津波で被災したが、3階にあったピアノは無事だった。実家は両親が亡くなった後、無人になり、その後、土地を買い取った人が家を解体。ピアノは、引き取り手が見つからず更地に置かれたままだった。
昨年6月頃、現状を見かねて土地の所有者から預かったのが、団体職員でミュージシャンの佐久間令さん(45)=同市中央2丁目=。仕事の傍らドラマーとして活動。石巻のトリコローレ音楽祭や仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバルなどに参加してきた。
佐久間さんは「自分は弾けないが、ピアノから『使って』という声が聞こえた気がした。ほこりだらけだったのを拭き取り、鍵盤も調整した。新たな活躍の場を与えたかった」と話す。
設置された場所は、佐久間さんの母生子さん(70)が7代目女将(おかみ)を務める春潮楼1階の店内。鈴鹿さんの実家があった場所のほぼ向かいだ。店は営業終了後、ラーメン店からライブ会場に早変わり。7日夜は東京から招いたバンドのライブがあり、鈴鹿さんが使っていたピアノが美しい音色を奏でた。佐久間さんもドラマーとして参加した。
鈴鹿景子事務所(東京)のプロデューサー鬼嶋英治さん(80)は「ピアノを令さんが預かった頃、景子さんもまだ元気だった。もし分かっていれば教えてあげられた。今年2月、店でピアノの復活した元気な姿を見た時、涙を止めることができなかった。仏前で景子さんに報告した。彼女も喜んでいると思う」と語った。
佐久間さんは「石巻は昔から音楽が盛んな街。震災から13年たつが、鈴鹿さんが使っていたピアノで街を明るくしたい」と誓った。
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