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震災後生まれの子どもたち 教訓を学び、災禍へ備え 北上小、矢本東小

 11日で東日本大震災から13年。学校現場では震災後に生まれた世代が増え、風化を防ぎ、かけがえのない命を守るための取り組みが重要になっている。震災を自分事として捉え、教訓を伝え続けることや、災禍への備え、被害を減らす対応力が求められている。

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北上小 復興マップ、危険エリアを視覚化

防災担当大臣賞に輝いたマップを持つ北上小の5年生
街歩きとインタビューの内容を紹介するコーナー。地域の被害状況や安全への取り組みを聞き取った

 石巻市北上小5年生が東日本大震災の被害状況などをまとめたマップが、本年度の「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」(日本損害保険協会など主催)で最高賞に次ぐ防災担当大臣賞に選ばれた。震災の教訓を生かし、より安全な地域を目指して作成した点が評価された。

 コンクールは20回目で、地域の防災や防犯、交通安全をテーマとした作品を募集。本年度は全国658の小学校や児童館などから1708点の応募があった。北上小のマップは縦1.5メートル、横2.2メートル。「未来へつなぐ復興マップ」と題して、現在の5年生が4年生時、13人で約2カ月半かけて完成させた。

 マップには震災後に統合して北上小になった相川、吉浜、橋浦の3小学校や震災遺構となった門脇小について、津波の浸水や建物被害の状況、避難者数を調べて一覧にした。

 北上地区の地図には透明なシートを2枚重ね、土砂災害と津波浸水の想定域をそれぞれ着色。災害の危険があるエリアが一目で分かるようにした。

 学校周辺を街歩きし、北上総合支所や通学バスの運行会社、商店、駐在所の関係者にインタビューも実施。街の安全のために取り組んでいることや災害時の対応など聞き取ったことを記した。

 感想の欄には「自分や家族、みんなの命を大切に守っていきたい」「今度は教える側になって北上のことを知ってもらいたい」といった思いをつづった。

 佐藤嶺弥さん(11)は「危険な場所をみんなに教えたいと思って作った。災害の危険がある所をピンクやオレンジで塗る所が難しかった」と振り返った。武山ほのかさん(11)は「生まれる前に起きた震災のことを調べるのは難しかったけど、賞を取れると思わなかったのでうれしい。安全な避難場所を判断するために使ってほしい」と話した。

 同校では2021年度からマップ作りに取り組んでいる。指導した安全担当主幹教諭の井上雄大さん(55)は「震災を経験していないのでイメージが付きにくかったと思うが、子どもたちなりに考えて完成させた。マップ作りがゴールではなく、震災のことを事実として知り、古里の素晴らしさを感じてもらいたい」と語った。

矢本東小 防災学習参観、遺構見学も

被災した校舎内部を見学する6年生=2023年9月、石巻市震災遺構門脇小
防災学習参観で子どもと一緒に非常食を試食する母親=23年7月、矢本東小

 東松島市矢本東小(児童449人)は「生涯にわたり、どこで生活しても自分の命は自分で守る」を合言葉に防災教育に力を入れている。本年度は災害への備えを親子で考える「防災学習参観」を初めて実施したほか、時間・想定を毎回変える月1回の避難訓練、「東小防災の日」(毎月11日)の業前活動にも取り組み、防災意識や災害対応力を高めている。

 防災学習参観は東松島消防署、市、日本赤十字社県支部など11団体が協力し、昨年7月に企画した。保護者は東小防災の日に行う防災副読本などによる15分の学習を見学。協力団体が教室や講堂などに設けた煙道体験、避難所設営備品体験、非常食(アルファ化米)試食など19のブースを児童と一緒に自由に回った。

■家族で話し合う

 学校によると、参観後に家族で防災について話し合う「家族防災会議」を開き、家庭内でのルールを確認した割合は9割を超えた。

 東小防災の日の放課後には、教職員が「3.11」の体験などを伝え合う震災の継承会を実施し、指導に生かしている。

 避難訓練は地震・津波、火災といった想定で、授業時間や休み時間、掃除の時間などに実施した。新年度は避難訓練のほか、2カ月に1回程度、集団下校し、通学路を安全点検しながら歩き、教員から地震発生時の安全な避難について指導を受ける。

 5年生は市震災復興伝承館、6年生は石巻市震災遺構「門脇小」の見学を防災学習の一環として取り入れた。6年生は昨年9月、門脇小を見学。旧校舎では、高さ1・8メートルの津波が押し寄せ、その後火災に見舞われた教室などを外部通路から見て回り、校長室の倒れた金庫や焼け落ちた天井材、天板のない机などを確認した。

■被災状況は変化

 相沢進校長は震災当時、門脇小の教務主任を務めていた。児童たちは体験談を聞いていたが「被害の大きさは想像以上」と衝撃を受けた。解説員から当時、児童や教職員、住民らが津波と火災から命を守るため、被災した校舎から近くの高台に避難した話を聞き、変化する被災状況に対応した避難行動を学んだ。

 相沢校長は「震災遺構で聞いた話や学びを自分の言葉で伝えてほしい。教訓の伝承は震災の風化を防ぎ、未来の命を守ることにつながる」と話す。

 3月11日は業前の時間に「祈りと誓いの集い」を開く。震災当時、小学5年生と6年生、中学2年生だった3人の教員が体験を交え、児童たちにメッセージを伝える。震災で亡くなった当時の1年生と4年生の在校生2人の冥福も祈る。

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