閉じる

災害への対応力育成 東松島・防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA」 学び、未来に伝える

命綱にもなる「舫い結び」
三井紀代子(みい・きよこ)さん、山口県出身。5年間航空自衛隊として活動し、携帯販売ショップなどを経営。東日本大震災をきっかけに防災に関する取り組みを志し、KIBOTCHAの運営に携わる。

 想定外の災害はいつ起きるか分からない。平時の備えは、新しい情報を入手し、定期的に見直すこと。進化する防災用品、通信障害時に役立つ災害用伝言サービス、東松島市の「KIBOTCHA(キボッチャ)」の防災教育体験を紹介する。知識も対策もアップデートしてみませんか。(石井季実穂、渋谷和香)

   ◇

 東松島市野蒜の防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」は、奥松島トレッキングやカキむき体験などのアクティビティ、防災キャンプ、アウトドアレストランなどを展開している。その中で災害が起きた際に身を助ける「防災教育」を体験した。防災教育担当で元陸上自衛官の小暮文夫さん(74)がロープワークと担架作りを教えてくれた。

■応用効く「命綱」

 結んだら輪の大きさが変化しにくい「舫(もや)い結び」は命綱として使える。自分の腰に巻いて輪っかを作り、一方を固定したりする。覚えておくと便利だ。多くの結び方の中で最も応用が利き、世界で使われている。

 船と船とをつないだり、船を岸に結び付けたりするのを「舫う」と言う。舫い結びは船舶免許で必須の技術で、漁師は片手で素早く結べる。命綱は屋根の雪下ろしなど高所作業でも使える。

 今回は2本のロープを1本につなげる「本結び」を体験した。ハンカチやカーテンをつなぎ合わせばロープになる。小暮さんの手本を見ながら、ロープを上から重ねて巻き込むように通す。左右を同時に引っ張ると、強い力でなくとも結び目ができる。両側から引っ張る力には強いが、解こうとすると簡単に解ける。

 小暮さんは「なんとなくで結ぶと形は似ていても違う結び方になる。自分なりに、しっかり正確に覚えてほしい」と話した。

■生命を守る手段

 上着などで作れる「担架作り」にもチャレンジした。上着のチャックを閉じ、袖を服の内側に入れてできた穴に取っ手となる棒を通す。棒は自宅にあるほうきやスコップの柄など曲がらないものを使う。

 上着は子どもを運ぶ際に1枚、大人を運ぶ場合2枚必要。2着の襟がそれぞれ担架の両端に来るように装着する。棒を持ち上げるときに襟を親指で押さえながら持ち上げると、搬送者の頭や首を守ることができる。

 小暮さんは「生命を守らなくてはならないことは自然災害をはじめ交通事故など多岐にわたる。こうした技術を覚えておくと突発的な災害に対応する手段になる」と話した。

 防災教育のアクティビティは1人2時間で1650円。連絡先は0225(25)7319。

作ってみよう 上着で担架

使用する上着のチャックを閉める。袖は服の中に入れる
棒に袖を通す。棒を持つ方に襟を向けて装着する
大人を運ぶ場合は2枚の上着を使う。反対側にも棒を持つ方に襟を向けて上着を装着する

貴凛庁・三井紀代子代表に聞く

 東松島市野蒜の防災体験型宿泊施設「KIBOTCHA(キボッチャ)」は、2018年の開設から防災教育や地域活性化の事業を展開し、能登半島地震ではいち早く支援に駆け付けた。運営する貴凛庁の三井紀代子代表(51)に聞いた。

<防災、日常の中にある>

-能登半島地震の被災状況を踏まえ、私たちはどのようなことから防災に取り組めば良いか。

 「能登半島地震が発生して1日目から起こったのはトイレ問題。避難所などの衛生問題は避難者に大きな影響を与える。特に簡易トイレの備えは重要だ」 
 「水、電気の確保、約3日分の非常食の備蓄や季節に応じた暑さ、寒さ対策など体を守る備えも必要となる。井戸や湧き水の確認、自家発電など今あるインフラが絶たれたときに切り替えられるものを用意しておいてほしい」

-東日本大震災から13年。石巻地方の現在の防災への取り組みをどう見るか。

 「東松島市内は被災地であるゆえに住民の防災意識は高い。各地区で独自の防災訓練を実施している。今後は震災を知らない世代が増えるため、訓練の継続がとても大切だ。震災を風化させないため、訓練を語り継ぐ機会にしながら、地域のコミュニティーを強化していくことが重要だ」

-防災のためにキボッチャは何ができるか。

 「災害が発生したときの対処法と、災害への備えや重要性を伝えることができる。さまざまな教育プログラム、防災教育のアクティビティなどを提供し、防災を身近にしてもらえるようにしたい」 
 「楽しみながら防災を学び、ストレスなく備えられる防災を啓発していく。地球温暖化で多発する集中豪雨などの自然災害を防ぐためにも、環境に配慮した防災を紹介していく。防災は日常の中にあることを伝えていきたい」

関連リンク

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ