(841)故郷(ふるさと)の春夕焼は弔旗なり/土見敬志郎(1935年~)
作者の故郷は塩釜市の寒風沢島。東日本大震災の大津波で甚大な被害に遭った。弔旗は弔意を表すために掲げる旗だが、島全体を染め上げるような春の夕焼けが今は弔旗となって包んでいる。句集のあとがきに「私の胸の中にある懊悩(おうのう)と訣別(けつべつ)するには何かを書き残さなければとの切実なる思いが潜在意識と…
関連リンク
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- ・(837)風花や足湯に妻をおきざりに/小菅白藤(1930年~)
- ・(836)草餅の黄粉溢れる書道室/桜井優月(2005年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。