(842)翼なきものへ焼野の朝が来る/佐々木啄実(2004年~)
少し謎めいた句だ。ここでの「焼野(やけの)」は芽吹きを促すため野焼きをして黒々と焦げた野原。春の季題である。翼なきものとは何だろう。人か。いや、地上にあって飛ぶことのできないものたちは、野焼きの煙から逃れられないということかもしれない。「わかってもらえなくてもいい」と言わんばかりに省略した言いさし…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。