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能登半島地震 東日本大震災学ぶ、生かす(6・完) 断水 配管の更新、予算が壁に

ペットボトルを持ち込み水を受け取る被災者=2月12日、輪島市
住宅倒壊が目立つ珠洲市宝立町では各所でマンホールが飛び出ていた=2月10日

 正月の平穏を襲った石川・能登半島地震。津波被害や原発の立地など、東日本大震災で被災した石巻地方との共通項は多い。震災では注目されなかった建物の倒壊や火災など、想定すべき新たな課題も表面化した。次の大災害で被害を最小限に食い止めるため、私たちに必要なことは何か。石巻地方と能登半島。二つの被災地の現状と課題を探った。(大谷佳祐、西舘国絵、漢人薫平)

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 石川県輪島市中心部の健康センターを活用した避難所に、ペットボトルやポリタンクを抱えた人が行き交い始める。人波は給水所の開設を意味していた。

■元の生活戻れず

 「水運びが仕事のよう」。家族3人で暮らす同市河井町の大谷亘さん(72)は、20リットルのポリタンク四つを車に積んで給水に訪れた。「トイレにも片付けにも水が要る。水道が復旧しないと生活は元に戻らない」と疲れた声で話した。

 同市の支援物資配給所には1日400人前後が足を運ぶ。運営に携わる職員は「最も求められるのは水と簡易トイレ」と、上下水道の途絶が被災者の生活に与える影響の大きさを指摘する。

 能登半島地震では、上下水道管や浄水施設が大きく損傷した。断水は七尾や輪島など5市町で続く。珠洲市は今も9割以上が断水し、一部地域では復旧のめどが立っていない。

■地方、耐震化に遅れ

 水道施設の損壊の要因に老朽化がある。設備の維持には多額の費用が必要。過疎や高齢化が進む地方は収益が少なく、耐震化が遅れがちだ。

 東日本大震災で打撃を受けた石巻地方の水道施設は、ようやく復旧から耐震化に移った段階だ。石巻、東松島両市の水道行政を担う石巻地方広域水道企業団の管路全体の耐震化率は2021年度末で27.7%。震災復旧による水道管更新で、震災前から16.1ポイント上昇し、全国平均19.0%を上回ったが依然として低い。企業団は本年度、老朽化した水道管や施設の耐震化に本格着手し、費用は年平均約32億円を見込む。

 耐震化に備えて企業団は昨年4月、水道料金を29年ぶりに引き上げた。給水人口は震災前より3万人少ない17万人に落ち込み、年2000人ペースで減少。需要減少を踏まえ、現在13ある浄水場を将来的に9施設に再構成し、コスト削減を図る。佐々木知洋経営企画課長は「効率的に耐震化を進めるために、どこに費用をかけるか収支とのバランスを見極めて行う」と話す。

■健康悪化に直結

 能登では下水道の途絶も長引く。上水道が復旧しても水洗トイレを流せず、排せつを減らすために飲食を控えるなど、下水道の不通は被災者の健康悪化に直結する。

 国土交通省は災害に備え、下水管につなげた専用マンホールに便器を取り付ける「マンホールトイレ」の普及を目指す。石巻市に133基、東松島市に148基あり、女川町にはない。

 東松島市は03年の宮城県連続地震での経験を踏まえ、09年度から設置を推進し、震災時に役立った。トイレは運動会などの地域イベントで活用し、市民への周知に努める。市下水道課の職員は「イベントに訪れるのは緊急時に同じ場所へ避難する人。必要な時に迷わず使えるよう、平時から設置方法や使い方を広めることが重要だ」と強調した。

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