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能登半島地震 東日本大震災学ぶ、生かす(5) 倒壊 遅れた耐震化、命を奪う

耐震化が遅れていた木造家屋などが被害を受けた石川県。原形がなくなった住宅も多かった=2月10日、珠洲市春日野地区
地震で損壊した浜谷さんの自宅(中央)。崩れ落ちた隣家の屋根に部屋の一部がふさがれた=2月10日、石川県珠洲市

 正月の平穏を襲った石川・能登半島地震。津波被害や原発の立地など、東日本大震災で被災した石巻地方との共通項は多い。震災では注目されなかった建物の倒壊や火災など、想定すべき新たな課題も表面化した。次の大災害で被害を最小限に食い止めるため、私たちに必要なことは何か。石巻地方と能登半島。二つの被災地の現状と課題を探った。(大谷佳祐、西舘国絵、漢人薫平)=6回続き=

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■まるで戦争の後

 崩れて原形をとどめない家屋や、1階部分を押しつぶした黒瓦の屋根が、無残に残されていた。「まるで戦争の後のようだ」。石川県珠洲市で片付け作業をしていた男性がつぶやいた。

 能登半島地震では、倒壊した家屋が凶器となり、多くの命を奪った。犠牲者のうち、警察庁が調査した222人(1月30日時点)の死因は、全体の4割が「圧死」、2割強が「窒息・呼吸不全」で、倒壊した建物の下敷きとなったとみられる。閉じ込められたことなどによる「低体温症・凍死」も次いで多く、耐震性の重要さを浮き彫りにした。

 「まさか自分の家につぶされるなんて…」。珠洲市春日野地区の浜谷俊輝(としてる)さん(80)は元日の恐怖を振り返る。自宅のソファでテレビを見ていた時、激しい揺れに襲われた。神棚などが落ち、割れた窓ガラスが床に突き刺さる様子に驚いた。次の瞬間、落ちてきたはりとソファの間に挟まれ、身動きが取れなくなった。助けを呼び続けていると、20分後、近所に住む長女の高倉直美さん(53)夫婦が駆け付け、車にあった油圧ジャッキではりを持ち上げ、助け出してくれた。

 石川県の住宅被害は7万5000棟を超える。そのうち倒壊した建物は、耐震基準が厳格化される1981年以前の旧耐震基準の木造住宅が目立つ。2023年5月に珠洲市で震度6強を観測する地震が発生するなど、20年ごろから頻発した地震で、建物にダメージが蓄積していた。

■過疎で対応後手

 珠洲市の耐震化率は51%、輪島市は45%と全国平均の87%を大きく下回った。過疎化で高齢世帯が増え、跡継ぎもいない。耐震に費用を投じる意識が向かなかったことが、被害拡大の要因となったとみられる。

 耐震工事の相場は100万~300万円。工事を施していなかった浜谷さんは「考えていなかったわけではないが、年金暮らしの高齢者には難しい問題」と話す。

 東日本大震災の被災地は津波による家屋の流失が目立った。新耐震基準での再建が進み、耐震化率は県全体で92%(23年)、石巻地方3市町はいずれも80%以上と高まった。

 一方、大規模な津波被害を免れた集落では、旧耐震基準の木造住宅が残る。石巻地方でも震災のほか、宮城県連続地震(03年)や福島県沖地震(22年)など大きな地震が相次ぎ、目に見えない損傷が生じている恐れがある。

■95%を目指して

 宮城県内の市町村の多くが25年度中に耐震化率95%を目指す。震災で町の住宅の7割が全壊・流失した女川町では職員が耐震化が必要な世帯を訪問し、町の補助事業を紹介するなど、相談に応じる。

 町建設課の担当者は「能登のような災害が石巻地方でも起きる可能性はある。防災意識が高まった今こそ、命を守る耐震性の向上を考えてほしい」と訴える。

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