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いしのまき食探見 > ノリ 黒い恵み収穫、暗闇で手繰り

冷たい海風の中、ノリを専用の機械で巻き取る漁師=3月4日午前1時ごろ
粉末ノリを混ぜ込んだそば。喉越しとノリの風味を楽しめる

 海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。

ノ リ

 日付が変わる頃、暗闇の松島湾に繰り出す船に同乗した。3月上旬、冷たい空気が肌を刺す。石巻の午前0~3時ごろの気温は1度前後。東松島市宮戸月浜は養殖ノリ収穫の終盤を迎えていた。

 網に黒々と育ったノリが専用の機械で巻き上げられる。1回の漁で採れるのは板ノリ6万~13万枚分。そのまま加工場に運び、昼前まで乾燥させ、乾ノリを生産する作業を続ける。生産グループ「月光」の山内良裕社長(69)は「緑色が深いほど品質が高い。今年は色がいい」と語る。

 特産品として有名な東松島のノリは昭和初期に養殖が始まった。「月光」は東日本大震災で生産施設が甚大な被害を受けた漁師が合同で設立し、2012年に生産を再開した。

 ノリは1シーズンに4回前後収穫できる。摘み取ると2週後に再収穫できる。収穫は例年11月から4月まで。近年は海水温の上昇で適期は短くなりつつある。

 山内社長は「ノリ作りは技術とセンス。板ノリをすく前の刻み方や湿度管理など、同じように作業しても質が変わる」と言う。

 ノリを生かした食品は市内に豊富だ。矢本の飲食店「岩手屋」では、同市のアイザワ水産の粉末ノリを混ぜた二八そばを提供する。つゆを付けずに口に含むとノリの香りが爽やかに広がった。

 店主の千葉芙義さん(77)は「ソバの風味とノリの香りがけんかしないで味わえる」と話す。ノリそばを食べに来た常連客の女性は「ここでしか楽しめない香りの良さと少しの歯ごたえが魅力」と笑顔で話した。
(西舘国絵)

<メモ>
 月光のメンバー個人が販売するノリは東松島市のHarappa(はらっぱ)などで購入可能。岩手屋のノリそばは1000円。数量限定のため、店は「予約をお勧めする」。営業は午前11時~午後3時、午後5~7時で、木曜と第3水曜定休。連絡先は0225(82)3124。

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