(853)牛死せり片眼(かため)は蒲公英(たんぽぽ)に触れて/鈴木牛後(1961年~)
作者は北海道で酪農を営んでいた。句からはこの牛が放牧されていた牛だとわかるが、現代の酪農では放牧は大変なので少数派だ。重労働でも手応えのある牛との日常を書き留めた俳句には臨場感がある。死んだばかりの牛が横たわっている。眼球は開いたままでタンポポに触れているが、何の反応もない。長く世話をしてきた牛の…
関連リンク
- ・(852)蕗のたう洗ふや水の手になりて/常原拓(1979年~)
- ・(851)うぐひすのこゑに小さく畳む紙/安里琉太(1994年~)
- ・(850)九つはさびしい数よ鳥雲に/今井杏太郎(1928~2012年)
- ・(849)春の水花瓶の中に曲がりけり/小野あらた(1993年~)
- ・(848)龍天に昇らせ妣(はは)と遊びけり/佐藤鬼房(1919~2002年)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。