(857)大學生おほかた貧し雁歸(かりかえ)る/中村草田男(1901~1983年)
前書きに「大學構内にて」とある。卒業、学位授与の式典の慌ただしさもあらかた終わった、春休み中の静かな構内だろうか。まだ在学する者の中には、ひょっとすると修了できなかった者もいるのかも。大方は貧しいから、学費も心配だ。数少ない裕福な学生を見ると、何だかとってもうらやましい。空を見上げると、春になって…
関連リンク
- ・(856)春の雲素顔ひとつに決められぬ/なつはづき(1968年~)
- ・(855)木になりて春の鳥どち宿したし/中嶋鬼谷(1939年~)
- ・(854)地球儀の半球眩し彼岸過/加藤右馬(1990年~)
- ・(853)牛死せり片眼(かため)は蒲公英(たんぽぽ)に触れて/鈴木牛後(1961年~)
- ・(852)蕗のたう洗ふや水の手になりて/常原拓(1979年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。