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石巻、女川が「消滅可能性自治体」に 20、30代女性が半減 人口戦略会議2020~50年推計

 経済界有志らでつくる民間組織「人口戦略会議」は24日、人口減少が深刻化し、将来的に「消滅の可能性がある」自治体が全国で744あるとの報告書を公表した。石巻地方では石巻市と女川町が消滅可能性があると指摘された。2020~50年の30年間で、子どもを産む中心世代となる若年女性(20~30代)が50%以上減るとの推計を根拠とした。東松島市は、自立持続可能性自治体や消滅可能性自治体などに分類されない「その他の自治体」とされた。

 14年に「日本創成会議」が示した「消滅可能性都市」には石巻、女川両市町を含む896自治体が分類されていた。人口戦略会議は今回の結果を「14年より改善が見られる」と評価する一方、外国人住民の増加が要因で、少子化自体には歯止めがかかっていないとみる。

 今回は新たな試みとして、人口移動がある場合と、ないと仮定した場合の若年女性減少率を組み合わせ、1729自治体を大きく4分類した。内訳は石巻市や女川町など消滅可能性744、100年後も若年女性が多く残る「自立持続可能性自治体」65、人口流入が多いものの出生率が低い「ブラックホール型自治体」25、いずれにも該当しない東松島市など「その他」895。

 戦略会議は分類ごとに必要な対策を示し、石巻市と女川町は出生率向上などの自然減対策が「必要」、人口流出を食い止める社会減対策は「極めて必要」と分析した。東松島市は自然減、社会減の対策はともに「必要」とした。

 石巻市の20年の総人口は14万151人、若年女性は1万2309人。50年は人口移動がある場合で8万6785人と想定し、若年女性は5562人、減少率は54.8%とした。

 女川町は20年の総人口が6430人、若年女性は557人。50年には総人口3062人に半減し、若年女性は208人で減少率は62.7%。

 東松島市は20年が総人口3万9098人、若年女性3778人。50年は総人口2万7332人。若年女性は1994人で減少率は47.2%とした。

 分析は、23年12月に国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が発表した地域別将来推計人口を基にした。

子育て世代へのさらなる支援、急務に

 人口戦略会議が公表した報告書で「消滅可能性がある」と指摘された石巻市と女川町。東松島市は消滅可能性からは外れたものの、3市町とも自然減、社会減ともに人口減少の歯止めとなる対応が迫られた。同会議は人口の動きは地域で異なるとし、自治体に特性に応じた対策を求める。

石巻市子育て世代包括支援センター「いっしょissyoえきまえ」。市は子育て世帯の支援に力を入れる

 女川町とともに「社会減対策が極めて必要」とされた石巻市。本年度、新たに就業し奨学金を返還している市内在住者への返還支援事業を始める。移住者の住宅取得の補助金事業は、上限額を引き上げ、子育て世帯に手厚く拡充した。

 移住者対象のペーパードライバー講習受講料の補助などを展開するが、斎藤正美市長は「残念ながら成果が現れていない。公表データや内容に基づき真摯(しんし)に対応する必要がある」とコメントした。「20~30代の女性や子育て世代の意見を広く取り入れ、人口減少の抑制と基盤となる稼ぐ力の強化を推進する」とした。

 女川町は本年度から第2子以降の小中学校給食費無償化、修学旅行費の補助などを順次実施し、子育て環境を整える。移住定住促進に向け、民間賃貸住宅を新築した事業者への支援金事業も実施。集合住宅や一戸建て住宅など、さまざまな生活スタイルに合わせる。

 須田善明町長は「人口減少下でも活力やにぎわいを維持できるまちづくりを目指し、都市構造を一新し公民連携の取り組みを行ってきた。前回より減少率は抑制されたが、人口減が続くこと自体は他の地方都市と変わらない。国全体で人が減り続けるということを前提に、どう向き合い対処するかが肝要だ」と話す。

 東松島市も自然減、社会減の対策が必要とされた。渥美巌市長は「県内の多くの市が消滅可能性が指摘された中、頑張った方ではないか」としながら「女性人口をどれだけ確保できるかが課題。魅力ある子育て政策などを打ち出さないと改善は難しい」と分析した。

 雇用創出と子育て環境の充実に向け、企業誘致や、放課後児童クラブの受け入れ時間延長、18歳までの医療費無償化などに取り組んできた。本年度は牛網地区などで宅地整備に乗り出す。大衡村が消滅可能性自治体から脱却したことに「工業団地など雇用があるからこそ。企業誘致を進め、若者や女性が働く場所をつくる」と述べた。

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