(881)桜餅食うてお迎へ待つとせん/浅川正(1950~2021年)
西行法師の有名な歌に<願はくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ>がある。如月(きさらぎ)の歌を引用するには少し時季が遅いが、春という時季、昔から日本人は死を意識するようだ。この句もまた、切迫したものを抱える句。「桜餅食うて」がユーモラスにして壮絶。食べることは即生きることだが、生命維持には必…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。