渡波地区独自の津波避難検討 住民主体の協議会、設立 石巻市内で初
県が2022年に公表した最大級の津波浸水想定などを踏まえ、石巻市渡波地区の住民らが14日、「渡波地区新たな津波避難対策検討協議会」を設立した。有事の際に地区住民約1万3800人の命を守るため、津波からの避難方法や避難場所などを住民が主体となって考える。津波避難対策に関する住民による協議会設立は市内で初めて。
協議会は渡波地区民生委員・児童委員協議会や同地区老人クラブ連合会、同地区区長行政衛生連合会、渡波婦人会などの関係者23人で構成。市や地元市議、警察、消防の関係者がオブザーバーを務める。
渡波地区は東日本大震災の津波で甚大な被害を受け、519人の住民が死亡・行方不明となった。市内は震災の復旧・復興事業で防災力の向上が図られたが、同地区は平たん地が多く、県想定や市の津波ハザードマップでほぼ全域が浸水し、多くの所で高さ3メートルに及ぶと想定されている。
協議会は今後、県想定に基づく避難者数の把握をはじめ、新たな避難場所と要支援者の避難方法、車での避難ルールを検討し住民や市に提案する。津波避難への意識を調べる住民アンケートも実施。家族構成や想定する避難方法と避難先などを聞く考えで、1カ月以内を目標にアンケート用紙を配布する。
設立総会が市渡波公民館で開かれ、渡波地区区長行政衛生連合会会長などを務める阿部和夫さん(76)が会長に選出された。阿部会長は「いつ来てもおかしくない災害に対しスピード感を持って安全対策をまとめたい。行政に全てを委ねるのではなく、大震災を経験し地域の実情に詳しい住民が主体となり、地域全体で震災の教訓を生かす取り組みを進めたい」と述べた。
斎藤正美市長は「市民と行政が一体で防災対策を進める上で、協議会は市の地域防災の新たな出発点になる。取り組みが一人でも多くの命を守ることにつながり、他地域の模範になってほしい」と期待した。
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