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石巻市学校防災推進会議 地域との連携模索 円滑な協力態勢を議論

佐藤健(さとう・たけし)氏:1964年10月、名取市出身。東北大大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。フジタ建築設計部・技術研究所、宮城工業高等専門学校建築学科准教授、東北大大学院工学研究科付属災害制御研究センター准教授を経て、2012年4月より現職。

 石巻市教委は、東日本大震災の教訓を生かして災害から子どもの命を守るため、学校現場や市教委の関係者が意見を交わす学校防災推進会議を本年度も始めた。市内では学校と地域の連携強化が大きな課題の一つとされており、有事にも円滑に協力できる態勢づくりなどを議論していく。

 本年度1回目の会議が17日、市防災センターであった。市内の幼稚園や小中高校、市教委などから約30人が出席。市震災伝承推進室も初めて参加した。座長には東北大災害科学国際研究所の佐藤健教授を迎えた。

 「防災研修」「防災管理」「防災教育」の3分野に分かれたワーキンググループの代表者が本年度の事業内容をそれぞれ報告。出席者は積極的に疑問点や提案を出し合い、より効果的な取り組みを模索した。

 報告を通じ、学校と地域の連携に関する議論が白熱した。「防災研修」では、教職員や管理職員の災害対応力向上に向けた研修会に関して、出席者からは「地域との連携強化のため、地元の代表者らにも参加してもらってはどうか」と声が上がった。

 「防災管理」のグループは、市内での地域防災連絡会の設置・運営状況の調査結果を発表した。住民と合同で防災訓練をした学校が増えた一方、連絡会員の高齢化や災害に対する意識の低下といった課題を紹介。「学校と住民の連携が取れている地域には市の総合支所や支所が積極的に関わっている」という指摘も出た。

 推進会議は、大川小事故検証報告書「24の提言」を具現化する要の役割を担う。第1回会議を踏まえ、各ワーキンググループを適宜開催する。全体会議は年度内に計3回開く。

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東北大災害研・佐藤健教授に聞く

 石巻市学校防災推進会議の座長を務める東北大災害科学国際研究所の佐藤健教授に、学校と地域の連携の在り方を聞いた。(聞き手・漢人薫平)

-学校と地域の連携で重要なことは。

 「学校安全マニュアルには、学校管理下の子どもたちが緊急避難する場合、どこに、どう避難するのかなどが具体的に書かれている。その内容を保護者や地域の人に共有しているかがまず重要になる」

-学校と地域が共に考えるべきことは何か。

 「県が2022年に最大クラスの津波浸水想定を公表した。東日本大震災時は1階しか浸水しなかった建物でも、新想定では2階まで浸水し、避難できる空間が目減りする可能性がある。つまり、避難場所の学校に収容できる人数が減るかもしれないことを共に認識する必要がある」 
 「例えば、学校の避難可能な床面積から収容人数を算出し、地域住民が学校に避難するのか、もっと遠くの施設に逃れるのかを検討すべきだ」

-地域住民側にはどのような姿勢が求められるか。

「震災当時は学校だけで避難計画を作り、犠牲者を出してしまった。学校のことは学校に任せるという意識ではなく、自ら考える住民の数を増やしてほしい。地域の防災の主体はやはり地元住民だ」

-市内には地域防災連絡会がある。どのように活用するべきか。

 「連絡会や住民自治組織などが学校と防災計画を互いに共有し、共同訓練をする。そこで判明した改善点を改善していくのがいい」 
 「市が推進するコミュニティ・スクールの中で、特に防災に力を入れることになっている。この取り組みを生かし、国内のロールモデルになってほしい」

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