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ブルーインパルス搭乗記(19) ローリングコンバットピッチ 滑走路に速やかに着陸

昭和中期から継承されるブルーインパルス伝統の課目ローリングコンバットピッチ(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

■横転加えて進入

 5、6番機がタッククロス実施中にローリンコンバットピッチの準備に移行します。コンバットピッチは戦闘機が最も無力化する着陸時の時間と範囲を最小限にするため、低高度高速で滑走路上空まで進入し、上昇、急旋回をして速やかに着陸する進入方式です。その進入方式に横転を加えた昭和中期から継承されるブルーインパルス伝統の課目です。

 エシロンといわれる右前に前機を見る斜め一直線の隊形で石巻湾に沿う形で高度を下げていき、石巻港雲雀野埠頭(ふとう)辺りからスモークを引き、上昇を開始。右にロールを開始するのに追従します。1番機のみが反転しそのまま左旋回に入り、一定間隔で2番機、3番機も追従します。

 4番機も反転するときれいな三日月模様が一定間隔で並びます。ゆっくりと旋回しているように見えますが、常に3G近い重力がかかっています。1番機がスモークを切ったところで2番機も3番機も同じ場所でスモークを切ります。3本のスモークをすぐ左に見て4番機も同じ場所でスモークを切り1番機から4番機の全ての演技が終了します。

 5、6番機の最後の課目のコークスクリューを上空から見つつ、着陸態勢に入ります。コークスクリューは航空祭の会場となる滑走路正面から背面で飛行する5番機の周りを6番機がバレルロールを継続する課目です。バレルロールは目標機から目を離さないまま目標機の後ろに回り込むものですが、目標機が至近距離で行うことは、私には操縦方法が分かりません。

■同じ車間距離で

 コークスクリューを終了した5、6番機は、着陸経路に乗っている1番機から4番機の後ろに同じセパレーション(車間距離)で、着陸態勢に入ります。1番機は全課目を終了したことと着陸許可を管制塔に求めます。管制塔は滑走路の進入方向、風向、風速や気圧の情報を返してくれます。

 制限速度を確認し、フラップと車輪を出します。操縦席内のインジケーターを確認するとともに管制塔からも車輪が出ているかの点検を受けます。定川河口付近から陸地に入り滑走路の延長線上に針路を合わせます。

 横風が強いため機体は揺れますが、確実に滑走路に向かっていきます。ゆっくりと進入する感じでしたが、地上が近くなると地上の風景がものすごい速さで後ろに流れていきます。着陸する直前、ブルーインパルスの格納庫で起こった乱気流だと思われる風に機体が弾かれますが何事もないように修正し、タッチダウンポイントに着陸します。

■接地に毎回不安

 着陸の際、テレビや映画のようにキュキュッという音はしません。今までの振動とは明らかに違う車輪の振動が伝わってきます。飛行中の姿勢は若干機首が上がっています。そのため機首の車輪が接地する角度はお辞儀するくらいの角度に感じられ、前輪がなかなか接地しないので、機首が滑走路に接触するのではないかと毎回不安になります。

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