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ブルーインパルス搭乗記(18) スタークロス 息合わせ、5機で星描く

5機が息を合わせ大空に星を描くスタークロス(静岡県の写真愛好家・鈴木智子さん撮影)

【元航空機整備士・添田潤】

 大空に星を描くスタークロス。5機のブルーインパルスの速度、高度、旋回率、降下率が全て一定でないときれいな星を描くことはできません。

 飛行訓練の打ち合わせのときに私が理解しやすいようにと、あえて真北から航空祭の会場となる飛行場に進入してくれることになっています。

 操縦席計器盤の水平位置指示器(船で言うところの羅針盤)は北を360、東を090、南を180、西を270で表示しています。今会場の北から南に向かって進入しているので、進行方向は180を指しています。傘型編隊で進入し会場上空で垂直上昇に移り、空しか見えなくなりますが後方監視用のバックミラーには滑走路が写り、だんだん小さくなっていきます。

■高度そろえ降下

 規定高度に達したときに1番機の合図で5機がそれぞれの方向に散開します。1番機はそのまま宙返りをする形で360、2番機は72度ずれた072、私の乗る4番機はさらに72度ずれた144、3番機は逆に72度ずれた288、6番機はさらに72度ずれた288に向かいます。全機背面の状態で正確にこの方位に乗せなければなりません。1番機の合図で反転して通常に戻りますが、さらに1番機の合図で背面になり垂直降下に移ります。このとき1番機は高度を読み上げ全機高度をそろえながら降下し、1番機の合図で水平飛行に移ります。間髪入れず1番機の合図でそれぞれの機種方位から右に18度旋回しスモークを引きます。実際は端数を丸めた方位で操縦しているようです。

■感動で涙が出る

 私が理解しやすいようにとは言っていましたが、水平位置指示器も姿勢指示器(地球儀を模した水平儀)もふてくされたようにぐるぐる回って何が何だか分かりませんでした。これで本当に合っているのかと思った瞬間、真正面に1番機のスモークが見え始めます。途中左後方から6番機が向かってくるのが見え2番機が引いたスモークの下を通り1番機がひき始めたスモークの先端でスモークを切ります。その後右旋回しながら上昇すると下方にきれいな星ができていました。あまりにも感動的で涙が出てきました。

 感傷に浸っている暇はありません。1番機に空中集合して最後の課目の準備に入ります。大きく離れているので、1番機はスモークを引いて自らの位置を教えてくれます。6番機は星を描いた後、休む間もなく5番機と空中集合してタッククロスの課目に入ります。

■最もスリリング

 タッククロスは、滑走路正面の洋上から2機横並びの背面で進入し、会場手前でお互いを見るように270度反転したままギリギリの間隔で擦れ違い、互いに滑走路両端に向かって飛行して急上昇してから、背面となり宙返りをして会場正面で擦れ違う課目です。ブルーインパルスの課目中、最もスリリングなものですが、安全に計算され尽くし、絶対に空中衝突しない経路を取っているのでご安心ください。

 この演技中ピンポイントで延べ4回の精密爆撃ができ、地上火器を集中することができない高度な戦技です。

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