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わいどローカル編集局 > 鹿又(石巻市)

 「わいどローカル編集局」は石巻地方の特定地域のニュースを集中発信します。17回目は「石巻市鹿又地区」です。

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八雲神社 大ケヤキ、伐採後も存在感神々しく

神社境内にある清水槻の切り株。根回りの大きさが往時の樹勢を今に伝えている

 石巻市鹿又地区で、古くから住民の心のよりどころになっている八雲神社(天野文彦宮司)。境内でひときわ目を引くのが、高さ約2メートル、根回り約12メートルとされる大ケヤキ「清水(しみず)槻(けやき)」の切り株だ。かつてその根元から湧いた水は霊水として重宝され、多くの人を癒やしてきたとされる。伐採されてなお、神木として地域に大切にされている。

 神社は鎌倉時代、山伏の修験院として越後国(新潟県)で創建され、各地を転々として1578(天正6)年、鹿又に移ったとされる。伝承によると、ケヤキはその当時から高さ約16メートル、枝葉が約36メートル四方を覆うほどの巨木だったという。

 その根元には水が湧き、あるとき旅人が飲むと、持病の癪(しゃく)が治ったとされる。やがて効能の評判が広がり、多くの人が訪れるようになった。江戸時代には俳人松尾芭蕉が「奥の細道」の旅路で立ち寄った。

 境内には現在、芭蕉の句碑が立っており、神社禰宜(ねぎ)の天野知彦さん(35)は「芭蕉と弟子の曽良も霊水で長旅の疲れを癒やしたのではないか」と想像を巡らす。

 大正時代になると、清水槻の根元に大きな空洞が見つかり、枝葉も徐々に枯れたため1931(昭和6)年、根元の部分を残して伐採された。湧水もいつしか枯れたという。

 それでも、巨大な切り株の神々しい存在感は今なお、参拝に訪れた人々を圧倒する。地元の信仰もあつく、切り株のお堂はいつも氏子らによって掃き清められている。天野さんは「神社があるのは地域の協力あってこそ。歴史を絶やさず、これからも守っていきたい」と話している。

伐採前の清水槻。明治時代か大正時代の撮影とみられる(八雲神社提供)

鹿又小 授業力向上へ「学年担任制」

国語の授業で6年1組の児童を指導する2組担任の高橋教諭(右)

 石巻市鹿又小(児童292人)が、学級担任を1人に固定しない「学年担任制」を昨年導入し、児童の学力向上などの成果を挙げている。同校は、学年担任制が教員の授業力向上につながっている-と分析。若手への指導技術継承や教員の負担軽減といった効果にも期待を寄せる。

 同校は全学年が2学級。このうち6年は1組担任の金子宏教諭(38)が社会と算数、2組担任の高橋真実教諭(36)が国語、家庭、音楽を担当し、2クラスとも教えている。担当教科はそれぞれの得意分野などで決めた。英語と理科は教科担任制で、他の教員が授業を行う。

 従来は担任2人がそれぞれのクラスで別々に全ての教科を教えていた。学年担任制導入後は、教材研究など授業の準備負担が減った分、担当教科に集中できることで「より質の高い授業ができるようになった」(金子教諭)という。

 昨年の全国学力テストで鹿又小は、国語と算数の平均正答率が全国平均を上回り、全国1位の石川県と同じだった。同校は学年担任制導入が一定程度、好影響を与えたとみている。

 生徒指導の面では、児童にとって悩み事を相談できる相手が増える一方、学校側は関わる教員が増えた分、子どもの変化に気付きやすくなったという。教員アンケートでは「いじめ防止に効果がある」など利点を挙げる声が出た。

 浦山正幸校長は「ベテランと若手がペアを組めば、先輩の指導技術や若手の情報通信技術(ICT)の活用を互いに学び合うことができる」と強調。ホームルームや給食指導も分担すれば休暇が取りやすくなる-として「教員の働き方改革にもつながる」と話す。

菅原スカーフ 海外に輸出、大手企業製品も

輸出するスカーフ。大きな布から裁断し、1枚1枚端をきれいに縫い上げる

 ダダダダダ…と、道路工事のような、機械が素早く動く音が聞こえる。絶え間ない音の正体はミシンだ。

 石巻市鹿又の「菅原スカーフ」が縫うスカーフは、国内外で広く流通する。中東などに向けた輸出品の生産は1日1000枚ほど。手がけた国内向け製品は誰もが知る大手企業のものばかり。各地のおしゃれを陰で支えている。

 1977年に同市釜谷地区で創業。流通の利便性から間もなく現地に移った。菅原喜代広代表取締役(65)は「得意先の信用を裏切らず、何とか夜逃げしないでやってきた」と笑う。

 従業員は長女の阿部絵莉香さん(38)夫婦を含む14人。メーカーから受注し、企業の制服や商品のノベルティに採用されるスカーフを縫製する。

 どの企業の製品を作ったかは取引の都合上、公表していない。阿部さんの夫光一朗さん(40)は「名前が表に出る仕事ではないので、手がけたスカーフをテレビなどで見かけると『うちのだ!』とうれしくなる」とやりがいの大きさを話した。

 スカーフの材料になるのは、同じ柄を繰り返し織ったウールやシルクの長い反物。両端を一つなぎに縫い、スカーフの大きさに1枚ずつ裁断して仕上げる。

 女性らがミシンを操り、熟練の技術で裁断、縫製していく。柔らかい布を真っすぐきれいに仕上げるには集中力が要るため、勤務時間は5時間と短めに設定する。勤続45年の小林千賀子さん(69)は「最初は仕事についていけなかった。長くやっていても毎日が修行のようで、休みの日もつい物の縫い目を見てしまう」と話した。

 もうすぐ創業50周年を迎える。菅原代表取締役は「新型コロナ禍や物価高騰など苦労もあるが、需要がある限り続けたい」と述べた。

黙々と裁断・縫製作業をしてスカーフを作る従業員

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 鹿又販売店と連携し、都築理、西舘国絵の両記者が担当しました。次回は「女川町」です。

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