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コロナ5類移行1年、石巻地方のいま(1) 夜の街 戻らぬ客足、家飲み定着

ランチ営業で常連客をもてなす高橋さん(右)=21日、石巻市中央2丁目の「海船」
手作りの弁当を差し出す渡辺さん=21日、石巻市立町1丁目の「プラナ」

 新型コロナウイルスの位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ感染症法上の「5類」に引き下げられてから1年が過ぎた。感染対策が個人に委ねられ、日常生活は「平時」に戻ったが、人と人との触れ合いを制限する「コロナ禍」を経て、社会はあらゆる面でかつてと異なる姿を見せている。石巻地方の現状を分野別に追った。(4回続き)

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■歓楽街、人まばら

 休日の観光地ににぎわいが戻る中、石巻市中心部の歓楽街は静けさをまとったままだ。5月中旬の夜、通りを歩く人はまばらだった。

 「平日の夜は車通りも少なく、人けがない」。同市中央2丁目の食事処「海船」店長の高橋賢次さん(43)は肩を落とす。

 5類移行後は忘年会、歓送迎会などの団体客が戻ってきた。新鮮な魚を格安で出すランチは常連客が増え、大型連休や豪華客船の寄港時は観光客でごった返した。

 一方で、平日夜は少ない客が近隣の店に分散し、満席が続く日はほとんどない。「ランチの集客も夜にはつながらない。知り合いの店も『暇だ』と言う。この状況が続けば厳しいが、今後に期待もできない」

 原材料費や光熱費など物価高騰も経営に追い打ちを掛ける。値上げも検討したが「お客さんが遠のくかもしれないと思うと、簡単には踏み切れない」。電気をこまめに消し、フードロスは出さないなど小さな努力を重ねてしのぐ。

■弁当販売に活路

 ラウンジやスナックなどの社交場の状況はより厳しい。

 「コロナ前と比べてお客さんは半分程度。お酒は家で飲む習慣が定着してきたのかも」。同市立町1丁目のスナック「プラナ」を経営する渡辺わか子さん(63)は寂しげに語る。

 「接待を伴う飲食店」はコロナ禍で営業の自粛を余儀なくされた。その間、飲み方は変化し、5類移行後も2次会、3次会の需要は戻っていない。

 企業の会食や接待は減り、1次会で終わるケースが増えた。コロナ禍で浸透したリモートワークなど働き方の変化も影響していると、渡辺さんは推察する。

 店で待ってばかりもいられないと、客から好評だった料理の腕を生かし、宅配弁当の提供を始めた。団体の会合などでの注文が定着してきた一方、体力的な厳しさも痛感する。

 「営業時間を早めて料理を提供するなど、独自のおもてなしの在り方を模索したい」。夜の街に明かりをともし続けるため、試行錯誤を続ける。
(相沢春花、相沢美紀子)

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