石巻・震災津波伝承館で3周年展 解説員の石巻専修大佐藤さん、初企画
石巻市のみやぎ東日本大震災津波伝承館が6日、開館から3周年を迎え、震災ボランティアの活動を紹介する企画展を始めた。伝承館の副主任解説員を務める石巻専修大人間学部4年の佐藤陸さん(22)が初めて企画を担った。佐藤さんは「ボランティアのさまざまな取り組みを知り、『自分にもできることがある』と一歩を踏み出すきっかけにしてほしい」と願う。(漢人薫平)
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企画展は「東日本大震災とボランティア-あの日から続く支え合いにありがとう」。県内各地で今も続く活動の歩みと支援への感謝を、展示を通して表現した。
館内の多目的スペースに約20枚のパネルを設置。ボランティアの歴史に始まり、震災当時に多様な支援を実現した行政・災害ボランティアセンター・NPOの三者による連携体制や、復興の過程で変化していった活動内容などを写真と文章、詳細なデータでたどる。
ボランティアの活動調整を担った「石巻災害復興支援協議会」の議事録を基に、情報共有に使われたホワイトボードも忠実に再現した。「炊き出し」「心のケア」「ダニバスターズ」といった13もの分科会が効果的に協力していた状況をうかがい知ることができる。
佐藤さんが学ぶ石巻専修大は協議会の活動拠点になったほか、避難所や物資倉庫、会議室などとしてボランティアにも開放された。企画展では、当時学長だった坂田隆さんから震災時の思いを聞き取ったインタビューも公開している。
「震災の支援は個人間の目に見えないものもある」と佐藤さん。被災地で続くささやかな支え合いも知ってもらおうと、ボランティア参加者や支援を受けた住民らがメッセージを残せるコーナーも設けた。
佐藤さんは「メッセージが誰かのボランティア活動を始めるきっかけになればうれしい。石巻の人にも見てもらい、あらためて当時のことを思い返せるようにした」と話した。
企画展は30日まで。伝承館は入場無料。午前9時~午後5時(最終入館は午後4時半)。月曜休館。
<伝承の輪広げる「一歩」に>
「震災時に大学がボランティアに活用されていたことは、展示制作で初めて知った」
佐藤さんは震災で震度7を観測した栗原市出身。当時は小学2年生で、体育館で卒業式の準備をしていた。激しく揺れる照明に危険を感じながらも、壁にすがりついて耐えるしかなった。教員が迎えに来ると校庭へ駆けだしたが、揺れに足を取られて何度も転んだのを鮮明に覚えている。
学芸員を志して石巻専修大に進学し、2年時に震災復興を学ぶ講義を受講した。担当教授からの紹介をきっかけに昨年、ボランティアを経て正式に解説員に加わった。
当初は、学芸員になった際の練習のために解説をしていた。活動を続けるうち、来館者の「ありがとう」「ためになった」という言葉がやりがいになっていった。ボランティアにまつわる感謝を表現する企画展への着想にもつながった。
来場者が感謝を述べた後、自らの震災当時の記憶を語ることがある。「その時が一番うれしい」と佐藤さん。自身も解説の最後に必ず付け加える言葉がある。「たとえ被災した経験がなくても、伝え聞いた話を友人や家族に伝えることが『伝承』になります」。
津波を直接見たことはなく、自宅や家族を失ったわけでもない。それでも、次世代を担う最年少の解説員として、震災伝承の輪を広げる「一歩」を後押ししている。
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