(921)赤い花買ふ猛烈な雲の下/富澤赤黄男(1902~1962年)
季語に当たる言葉はなく、無季の句です。猛烈な雲として私は入道雲を思い浮かべました。白い腕を隆々と伸ばし、みるみる形を変えていく雲です。花は色以外の描写がなく、買った理由も書かれていません。しかし猛烈な雲の下で買うのですから、目を引くような激しい赤色のような気がします。雲の勢いを感じるのは、曇天では…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。