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「パリ市民、自然観に共感」 石巻出身の写真家高砂さん、個展振り返る

写真展の会場でパリ市民と交流する高砂さん(右から2人目)
パリ日本文化会館の前に立つ高砂さん。エッフェル塔が見える

 石巻市出身の自然写真家高砂淳二さん(62)=東京都=が、5月7日から6月1日までフランス・パリ市内で「鏡花水月」(※1)と題した初の写真展(パリ日本文化会館主催)を開いた。先日、帰国した高砂さんにパリ市民の反応や、肌で感じたパリの街の空気などについて語ってもらった。

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 会場となったパリ日本文化会館はエッフェル塔が近く、横をセーヌ川が流れていた。展示したのは「ヘブンリー フラミンゴズ」(※2)など自然や生き物などを撮った写真約45点。地球を構成するさまざまな動植物が織りなす繊細で美しい調和、生命の息吹を感じ取ってほしかった。

■予想以上の反応

 パリ市民の反応は予想以上にすごかった。作品を見て素晴らしいと思ったら、会場で私を探し出して直接、感激を伝えてきた。おかげで多くのパリの人たちと知り合うことができた。

 その時、強く感じたのは「写真の力」。写真には言葉の壁を超えて訴えるものがあることを改めて痛感した。環境危機を迎える今、私が写真に込めたのは自然や生き物と共生することの大切さだった。その思いをパリの人たちに感じ取ってもらえた。写真が世界共通の表現手段であることを再認識した。

 「地球と出会う旅」と題した講演会も開いた。100人くらい収容できるホールが入りきれないほどパリ市民の熱気であふれた。私が始めた合気道が、私の写真活動にも影響していることを告げると、最初は理解できないようだった。

 合気道はいかに相手と気を合わせるかが一つの極意。私は写真を撮る時、自然や生き物と気を合わせて、場に溶け込んで一体になる。逆に欧米人は自然をコントロールしようとする。そんな私の話がとても興味深かったらしい。

■居心地のいい街

 パリには1カ月近く滞在した。観光はあまりできなかったが、パリの人たちの優しさに触れることができた。それに個々を尊重し自由に生きている。そのパリ市民社会の文化の成熟度に感心した。街中ではいつもいろいろなイベントをやっていて、どんな表現も受け入れる。いいと思ったものは称賛する。パリはとても居心地のいい街だった。

 今、国同士の争いが絶えない。だが「文化の力」は国境を越えて人々をつなげる。パリで写真展を開き、その思いを強くした。私は写真の力でこれからも人々の心に訴えていきたい。

※1:「鏡花水月」は目で見ることはできても手に取ることができない、はかなく壊れやすいものを意味する。繊細なつながりで成り立つ地球が見せる一つ一つがまさに「鏡花水月」そのものという。
※2:南米ボリビアの標高3700メートルにあるウユニ塩湖で撮影。2022年「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」(ロンドン自然史博物館主催)自然芸術部門で日本人初の最優秀賞を受賞。

 高砂淳二さん、1962年石巻市渡波生まれ。ダイビング専門誌の専属カメラマンを経て89年、独立。地球全体をフィールドに活動、海の中から生きもの、植物、虹、大地、星空まで撮影。カメラを通して自然と人間の本来あるべき関係を模索する。 
 著書は「アシカが笑うわけ」「night rainbow~祝福の虹」「ASTRA」「Dear Earth」「光と虹と神話」など多数。今年、写真集「この惑星の声を聴く」を出版した。 
 トークショーや雑誌インタビューなども精力的にこなし、「自然のこと」や「自然と人間の関係」「人間の役割」などを訴え続ける。

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