<大観音の傾き(12)>コーヒーミルで豆を挽く 山野辺太郎
職場に着いて席に座ると、ノートパソコンをひらいた。朝、修司は天野家を出発し、黄色い花々の広がる光景のなかを通り抜け、ここへやってきた。これからきょうの仕事が始まるのだということが、なんだか妙なことのように感じられる。遠くの旅先から帰った直後のような高揚感と気だるさがあった。タンポポ柄の布団のうえで…
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