(935)紫陽花や雨にも日にも物ぐるひ/有井諸九(しょきゅう)(1714~1781年)
兼好法師は「あやしふこそ物狂おしけれ(ばかばかしい)」と言ったが、この「物ぐるひ」は日常を離れた狂気の方だろう。梅雨時にうっすらと横たわる狂気。狂気は芸能に通じると言うが、能楽の狂物(くるいもの)も連想される。紫陽花(あじさい)は別名「七変化」と言うが、色の変化が美しいほど、狂気は募るのかもしれな…
関連リンク
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「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。