(937)おやすみと電話を切つて金魚見る/黒岩徳将(1990年~)
物語を感じる句だ。電話の相手は恋人だろうか。離れて暮らしているのですぐには逢(あ)えない。たまに交わす電話でお互いの気持ちを確かめ合う。それでも、「おやすみ」と別れを告げた後は、一人の夜の孤独を感じてしまう。ふと目をやった金魚は、二人が縁日で一緒に金魚すくいをして持ち帰ったもので、彼がアパートの部…
関連リンク
- ・(936)大烏賊の腸つかみだす暑さかな/眞鍋呉夫(1920~2012年)
- ・(935)紫陽花や雨にも日にも物ぐるひ/有井諸九(しょきゅう)(1714~1781年)
- ・(934)形代へ吹く息けもの臭きかな/恩田侑布子(1956年~)
- ・(933)地図に在る泉はみどり誰もゆかず/原雅子(1947年~)
- ・(932)明易の鴉のなかを掃きにけり/草子洗(1975年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。