石巻地方の工場探訪(3) 製造・販売 モビーディック(石巻市鹿又)
<独自技術でウエットスーツ>
曲線の多い生地を手作業で器用に貼り合わせる。その数、40~50枚。次第に人の立体的な形が出来上っていく。つなぎ目の上から、生地を貫通させない「すくい縫い」を施して仕上げる。
マリンスポーツを中心としたウエットスーツ業界で国内トップシェアを誇る。スキューバダイビング用やサーフィン用のほか、海上保安庁、消防、漁業などの業務用も製造。年間約3万着を販売し、うち7、8割がフルオーダーで、全国の販売店から注文が入る。
独自の解剖学的裁断技術「A・C・T」に基づく動きやすさや仕上がりの美しさに加え、商品企画や生産管理を一貫して賄う総合力が評価されている。
1着の製造には設計、裁断、接着、縫製、検査と10人ほどの職人が携わる。経験年数を問わず一定の品質を維持できるよう、技術のマニュアル化を推進。熟練の技術者の手の動きを映像化し、添える手の動きや接着剤を付ける頻度といった詳細な解説を盛り込む。
マニュアル作成に携わる製造課リーダー星優さん(28)は「若手社員の技術習得が速まった」と語る。
技術を育む環境と、一人一人の追求心が、海の楽しさと安全を支えている。
(相沢美紀子)
■メモ
1963年、石巻市八幡町に東北初のスキューバダイビング専門店として創業。75年に法人化。84年に「白鯨」を意味する現社名に変更。95年、同市鹿又に新工場を建設、移転。海外にも輸出する。従業員78人。約60人が石巻市の本社・工場に勤務し、県外でのリモート勤務も採用する。同市鹿又嘉右衛門345。
◇
1次産業から宇宙まで、石巻地方には地域や全国のさまざまな産業を支える工場が多数立地する。職人技や最新設備が詰まった工場内部を巡る。=随時掲載=
関連リンク
- ・石巻地方の工場探訪(2) 研磨加工 エヌエス機器(石巻市和渕)(2024年8月16日)
- ・東北SDGs未来都市サミット 東松島市長も討論参加 福島・郡山
- ・ふるさと納税 2023年度寄付額、石巻市13億5700万円 3市町、増額対策に注力
- ・灯籠8000個、花火と共演 石巻・和渕で「夏まつり」
- ・みんなで輪になり「盆踊り」 伝統行事引き継ぐ 石巻・広渕