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「過去の思いに再会して」 石巻で大川小映画上映会 遺族佐藤さん、制作経緯や葛藤語る

映画制作の経緯などを語った佐藤さん(右)

 東日本大震災で児童・教職員84人が犠牲になった石巻市大川小を題材にした映画の上映会が20日、同市開成のマルホンまきあーとテラス(市複合文化施設)で開かれた。作品を制作した映像作家佐藤そのみさん(28)=東京都=は津波で同小6年だった妹みずほさん=当時(12)=を亡くした。佐藤さんは「震災から次に進むため過去に置いてきた思いに、映画を通じて再会してほしい」と来場者に語りかけた。

 震災で妹を亡くした少女たちの心の傷と友情を表現した劇映画「春をかさねて」と、佐藤さんや同年代の遺族に焦点を当てたドキュメンタリー「あなたの瞳に話せたら」の2作を上映した。石巻市民を中心に約300人が来場。映画は共感を呼び、上映後は大きな拍手が巻き起こった。

 利府町から訪れた会社員渡辺達也さん(66)は、津波で犠牲になった教頭と石巻高で同級生だったといい、「遺族の子どもたちの証言が衝撃的だった。友人の教え子が素晴らしい映画を作っていてうれしい」と話した。

 佐藤さんは震災で妹みずほさんを亡くした経験を基に、大学生だった2019年に両作品を制作した。近年は「ある春のための上映会」と題して全国各地で2作品を公開してきた。みやぎ生協石巻ブロックが協力し、3度目の地元開催を実現した。

 上映後のトークでは制作の経緯などを語り、「石巻の人に一番見てもらいたかった」と語った。震災当時からの心境も吐露し、葛藤や喪失感、変わりゆく景色を映像に残すことで「つらいけど次に進むことができる。そのために映画を作っていきたい」と語った。

 自主上映会はこの日を境に休止となることを発表した一方で、「常に脚本を書いたり、何かを作りたいという気持ちは消えない。また新しい作品を撮りたい」と意気込みを見せた。

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