いしのまき食探見 > ナス 漬物で爽やかさ味わう
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
ナ ス
表面の黒紫色がどこか涼しさを感じさせてくれるナス。夏から秋にかけて旬を迎え、調理法は多岐にわたる。焼いても煮ても、漬けてもおいしい食材だ。
東松島市赤井の近藤勝郎さん(80)とよし子さん(76)夫妻は、漬物用の「真仙中長(しんせんちゅうなが)ナス」を栽培。20年前にナス栽培を始め、今年は約2100本を育てる。
苗は5月初旬に植え、約1カ月半で実を付け始める。1番おいしい頃合いを見極めるには、長年培ってきた感覚が必要。勝郎さんは実を触り、絶妙な柔らかさになるまで追肥するなど手間をかける。
ナスは1回育てると、その土壌の栄養素を全て吸い取る。近藤さん方では毎年ナスを栽培するために、後継者不足などで空いている自宅周辺の畑を3カ所借りて毎年順番に使う。ナスを栽培した翌年は土作りのために麦を育て、次の年には畑を寝かせ、2年がかりで養分を蓄えさせる。
収穫は6~10月ごろ。毎朝7時から4時間かけて約150キロを手作業でもぎ取る。その後、選別や洗浄をして一晩漬ける。
ナス漬けは石巻市恵み野6丁目の園芸店「グリーンサム」と、東松島市大塩の産直施設「やもと四季菜館」に出荷。2人は「味は同じでも誠意を示したい」と曲がったものや大き過ぎるものは値引きする。
よし子さんは「そのままかじりついても、切ってショウガじょうゆなどであえてもおいしい。夏野菜の爽やかさが味わえる」と太鼓判を押す。
(相沢春花)
<メモ>
石巻地方では2000年ごろにJA桃生町なす部会が発足。現在は桃生、矢本、河南各地区の6生産者が所属し、今年は約33トンの出荷を目指す。取れたてのナスは石巻青果花き地方卸売市場を通して、市内のスーパーなどで販売されている。その他にも個人で栽培し、直売所に並べている生産者も多い。
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