閉じる

緑、色濃く 石巻・復興祈念公園で間伐始まる 地元NPO、市民親しむ場を模索

 東日本大震災からの復興と鎮魂を願う森をつくろうと、石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園に植えられてきた木々が育ち、森らしい姿を見せ始めた。4月からは成長を促す間伐作業も始まった。森づくりを担う地元のNPO法人などは、間伐や植栽の作業を通して、市民が公園に親しむ場をつくろうと模索している。(相沢美紀子)

植えた木が順調に育ち、緑が濃くなってきた石巻南浜津波復興祈念公園=3日

 同公園参加型維持管理運営協議会の杜づくり部会によると、公園への植樹は2017年に始まり、現在は38.8ヘクタールの敷地にクロマツやモミジ、ヤマザクラなど約40種、約10万本が育つ。うち7割ほどが市民参加の植樹で植えられた。部会メンバーらが近くの日和山や牧山などで集めた自生植物の種子を公園敷地内のビニールハウスで発芽させて苗木を育て、定植してきた。

 定植から5年が過ぎたマツなどは、光と風が入るように、密集した枝葉を間伐する時期を迎えた。公園の植栽設計に基づき、本年度から5年間で半数の5万本に減らす。将来的には3万本にする計画。

 間伐と平行して、花が咲く散歩道「十(とお)の花路(はなみち)」をつくる植栽も行う。海岸林や湿原、丘など公園内のそれぞれの環境に適した植物として、アジサイなどの低木やツワブキといった宿根草を植える。

 間伐作業には4月以降、修学旅行で訪れた中学生や企業関係者ら計4団体の有志も協力した。11月まで予約も入る。今月23日には植樹祭を行い、約500人が参加して花路に植樹を行う予定。

 部会は今後、市民が間伐や植樹に参加できる場を年に数回設ける方針。部会長でNPO法人いしのまき環境ネット代表理事の斎藤義樹さん(48)は「前例がない取り組みで常に手探り状態だが、多くの市民に公園に愛着を持ってほしい。大勢の人が犠牲になった地で、命と自然の再生を感じられる機会をつくりたい」と語る。

「足運び、愛着感じて」運営協杜づくり部会

 石巻南浜津波復興祈念公園参加型維持管理運営協議会が提供するプログラムの一環で、石巻地方労働者福祉協議会は8月10日、公園内でクロマツの間伐を行った。労働組合13団体の会員と家族計約35人が参加した。

 杜づくり部会に参加するNPO法人「こころの森」の理事長古藤野靖さん(65)らの指導で、高さ3メートルほどに育ったクロマツ約100本のうち約50本をのこぎりで伐採し、残した木の下枝を落とした。木々の間に日が差して風が吹き渡るようになり、参加者は気持ち良さそうに汗をぬぐった。

 公園内のビニールハウスでは、「十の花路」に植えるハマナスやハマギクの芽をポットに移し替える作業も行った。芽は2年ほどかけて苗木に育てた後、定植される予定。

 家族と参加した東松島市矢本西小2年阿部心奏(かなで)さん(8)は「マツの葉っぱがチクチクして痛かったけれど頑張って切った。木が大きく伸びて、花が咲く森に育ってほしい」と話した。

 古藤野さんは「森づくりは間伐や下草刈りといった人の手を入れ続けることが不可欠。多くの人に公園に足を運んで、親しみを感じてほしい」と呼びかける。

クロマツの間伐作業に取り組む労働組合の関係者ら=8月10日

関連リンク

関連タグ

最新写真特集

石巻かほく メディア猫の目

「石巻かほく」は三陸河北新報社が石巻地方で発行する日刊紙です。古くから私たちの暮らしに寄り添ってきた猫のように愛らしく、高すぎず低すぎない目線を大切にします。

三陸河北新報社の会社概要や広告などについては、こちらのサイトをご覧ください ≫

ライブカメラ