いしのまき食探見 > イチジク 復興の街で熟した果実
海と山とで育まれる豊かな石巻地方の食材。伝わる文化と技を生かした郷土の「食」を紹介する。
イチジク
秋になり、イチジクが熟し始めた。石巻地方では東日本大震災後、新たに栽培を始めた市民も多く、復興する街に根付きつつある。
津波でなりわいの漁業が施設ごと失われた女川町高白浜。被災者支援をしていた一般社団法人コミュニティスペースうみねこの八木純子代表理事(60)は、塩害で枯れたはずのイチジクの木が復活するのを見た。
漁師の新たな生きがいになればと、2013年に栽培を開始。今は11種約170本を育てる。生食できる甘い実が特長だ。八木さんは「皮だけ食べても甘い。試してみて」と語る。
葉は乾燥させて茶として売り出す。さっぱりした甘さが口に優しく、昨年は石巻市の醸造所とコラボビールも出した。
東松島市矢本の「さくらい海苔(のり)店」の桜井きさ子さん(74)と長男の妻伊代さん(38)は22年、乾燥イチジクの販売を始めた。
震災の津波で同市大曲浜地区にあった自宅が被災。矢本地区の新居に植えた木が多くの実を付けた。「もったいないから」と店に並べたところ好評で、昨年は約200袋を売り切った。
伊代さんは「加糖しないのに甘く、小腹を満たすのにちょうどいい」と話す。
同市宮戸でも漁業者でつくる奥松島果樹生産組合「いちじくの里」が16年、津波をかぶった農地で栽培を始めた。近く収獲のピークを迎える。(西舘国絵)
<メモ>
さくらい海苔店の乾燥イチジクは今月中旬から東松島市矢本のフレスコキクチ矢本店、石巻市小船越の道の駅「上品の郷」で販売予定。60グラム入り450円。コミュニティスペースうみねこの生イチジクはウェブサイトで注文を受けるほか、同市新栄2丁目の「ぐるめ処はんじろう」で不定期販売する。1キロ1000~3000円ほど。
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