東松島市、7市民センター直営へ 委託条件に法人格追加 まち協、運営離れる
東松島市が来年度、市民協働のまちづくり〔※〕の一環で各地域のまちづくり協議会(まち協)に委託してきた7市民センターの運営を市直営に切り替える。まち協は任意団体のため、施設での事故や不祥事が起きた場合に会長個人が負う責任が大き過ぎるとし、委託条件に法人格を有することを加えた。いずれのまち協も来年度までの法人化は難しく、市直営となることが決まった。
市は2023年7月、前年の市議会12月定例会でセンターの指定管理料の積算に関する付帯決議が採択されたことを受け、指定管理の在り方を検討する委員会を設置した。
委員会は、現行体制では施設内での事故や職員の横領など不法行為が起きた際、まち協会長が責任を問われる恐れがあると判断。今年1月、会計や監査体制が整った法人による管理が望ましいと市に答申した。
答申を受けて市は3月、委託条件を変更。まち協に法人格取得の意思を確認した。いずれのまち協も回答期限の6月までに方針決定ができず、来年度からの市直営が決まった。期間は2年間を基本とする。受託再開に向けて法人化を目指すまち協は市が支援する。
法人化を条件に加えたことについて、市市民協働課の担当者は「会長が負うリスクは当初から課題だったが、東日本大震災もあり解決できていなかった。組織体制や役員のなり手不足など、まち協が抱える課題全般について共に考えていきたい」と説明した。
市によると、直営化により、施設の清掃や事務用品のリースといった契約を市が一括して行うことで、経費の節減が図られる。一方で、市職員の配置で人件費は増加すると見られ、最終的な運営費は現状と同等か、上回る可能性もある。
〔※〕市民協働のまちづくり
2005年の市発足当初から掲げる官民連携の地域振興ビジョン。自治組織を通じて住民が政策の意思形成に関わり、市は地域の声を拾い上げる。
09年度には公民館を廃止し、まちづくりの拠点となる市民センター制度に移行。住民主導による地域活性化を目指し、各地区のまちづくり協議会が指定管理者に就いた。各センターは会議室などの貸し出しや市民講座の開設などの事業を展開する。
「住民自治の視点どこへ」 関係者に戸惑い
東松島市が掲げる市民協働のまちづくりの象徴として、各市民センターは地域のまち協が15年にわたって運営してきた。市の直営化や法人格取得を求める委託条件の変更に対し、関係者からは戸惑いの声が上がる。
センターの運営に携わる男性は「住民自治の意識が抜けている」と市の姿勢を批判する。委託条件が変更されたのは3月。法人格取得に残された期間は1年もなかった。別の関係者は「法人化が必要なら市が一律で取得の支援をすればよい。直営化ありきだったのでは」と疑問視する。
一方で、センター運営の在り方に改善の必要性を考える関係者もいる。まち協の会長の中には「会長が負う責任の大きさの説明を受け、なるほどと思った」「まち協とセンターの関係性を見直すいい機会だ」と好意的に受け止める声もある。
関係者によると直営化後、市職員を含むセンター職員は現行の半数程度になる見込み。センター職員の業務にはまち協の運営支援も含まれており、住民主体のまちづくりの後退を懸念する向きもある。
まち協関係者らの声に対し、渥美巌市長は「少数精鋭でセンターを運営し、まち協の活動も支援していく。市民協働のまちづくりの理念は変わらない」と述べた。
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