子育てと介護の縁側・今日も泣き笑い(15) 抜けたり生えたり 祖父へ分けてあげたい
【石巻市・柴田礼華】
長女あま音、もうすぐ5歳。最近乳歯が抜け始めました。1本目は8月末、仕事の関係で一緒に連れて行った東京滞在中、宿泊していたホテルで「おっかあ(私のこと)歯が落ちたー!」。数日前からぐらぐらしていた下の前歯が抜けて落ちてしまったようです。
急いでベッドの上の布団や枕をめくり、ベッドの下にも潜り込んで探したのですが見つかりません。果たしてホテルの部屋で抜けたかどうかも定かではありません。初めて抜けた乳歯は東京のどこかに置いてきたのでした。
■記念の歯、どこへ
その後も山口帰省中にさらに2本の歯が抜けたあま音。下の前歯3本分ぽっかり空間ができて物をかじり取るのが大変そうです。
そんな彼女に元体育教師で86歳の義父せんじい(先生おじいさんの略)が「今度生えてくる歯は大事にしないと、もう次は生えてこないんだよ」と教えます。当のせんじいは、若い頃の激しい運動のせいか、はたまた大好きな甘い物を食べ過ぎたせいか、自分の歯は3本しか残っていません。朝食の時、入れ歯を入れ忘れて食卓に着き「あ、歯がないから食べられない!」と仕切り直すこともしばしば。
小さい頃から歯のないせんじいの大変さを目の当たりにしてきたあま音は、3カ月に1度の歯医者さんの定期検診も嫌がらず、夜どんなに眠くても「歯を磨いてないー!」と歯磨きは欠かしません。
そして、そんな姉の姿を見ているせいか、1歳半の次女しお音も歯磨きが大好き。お姉ちゃんが歯磨きを始めると自分も自分も!と歯ブラシを握って見よう見まねでゴシゴシやっています。
ちなみに義母レツさん87歳はというと、さすが元看護師、自分の歯は全部健在で、固いいぶりがっこもポリポリかみ砕きます。ただ認知症を発症しているレツさん。毎朝洗顔と歯磨きに行ったきり、洗面所からなかなか出てこないことが多く、様子を見に行くと、歯を磨いたことを忘れて何度も何度も歯磨きを繰り返しております。長年の習慣の中で、そのくらい歯を大切にしてきたんだなぁと感心してしまいます。
■いとおしさ、実感
昨日、あま音と公園で遊んだ帰り道、私が「あまちゃん、歯がいっぱい抜けたねぇ」と話しかけると、「せんじいも歯がいっぱい抜けてるよねぇ。あ、あまの抜けた歯をせんじいに付けてあげたらいいんじゃない?」というナイスアイデアが! 一緒に歩いていた夫も「そのうちそういう技術が実現できるようになるかもね」と返していました。
そういえば座ってるせんじいの背後に立ったあま音が頭頂部をなでて「あまの髪をブスッと刺してあげようか」と言っていたこともあったなぁ。自分の体の一部を分け与えたいと思うくらい、あま音にとっておじいちゃんは大切な存在なんでしょうね。
そんなこんなで柴田家はしばらくの間、抜けたり生えたりにぎやかになりそうです。
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