女川原発再稼働秒読み、地域はいま(中) 細る恩恵 作業員減、経済への影響懸念
東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働が迫る今月中旬、女川町のホテル「Swimmy Inn Onagawa(スイミー・イン・オナガワ)」の鈴木伸輔総支配人(39)は思案顔だった。
「人(原発作業員の宿泊客)が、がくっと減っている。どうやってお客さんに来てもらうか、きちんと考えないといけない」
■「特需」後に苦境
2023年4月のオープンがちょうど2号機の安全対策工事と重なり、中長期滞在の作業員で全204室の多くが埋まった。「昨年は特需だった」という。
工事は今年5月に終わり、満室続きだった町内の宿泊施設に空きが出るようになった。収入減少をどう補うか、各施設の模索が続く。スイミーは大手予約サイトと連携し、観光需要取り込みを図っている。
原発の作業員はピーク時の23年7月、町人口の約5900人に匹敵する約5300人に上った。宿泊や飲食など地元への恩恵が多分野に及んだ一方、工事後は約3000人まで減った。
作業員の弁当を製造する同町の「すずきや」はこれまで多い日で1000個近くを原発に配達していたが、現在は300個前後。落ち込みをカバーしようと今年9月、町内の水産加工会社への配達を始めた。
鈴木雅之代表(69)は「電力さんあっての商売だから仕方ない」と話す一方、「これまで協力し合ってきたので(東北電は)地元に新たな配慮を示す必要があるのではないか」。
関係者によると、作業員減少の影響がより深刻なのは、石巻市など周辺部の宿泊施設という。東日本大震災以降、宿不足のため多くの作業員が町外から原発に通っていたが、最近では近場にある女川の施設に空きが出たため、切り替えるケースがあるという。
■3号機の行方は
新規事業に活路を見いだそうとする事業者もいる。同市でビジネスホテル・パークイン石巻を経営する電気工事業「電業社」は今夏、新たな客を呼び込もうと、初めてホテル屋上でビアガーデンを企画した。
木村秀社長(46)は「ホテルのPR効果があった」と手応えを口にするものの、観光やビジネスの客では、ホテルが満室になる日は少ない-と分析。インバウンド(訪日客)向けの民泊事業にも乗り出す一方、「将来は、宿泊以外の業態を探る必要が出てくるかもしれない」と打ち明ける。
女川原発は1号機の廃炉が決まり、2号機の再稼働が間近に迫る。地元関係者の関心事は、震災で停止したままの3号機の行方だ。再稼働の方針が正式に決まれば、2号機の安全対策工事と同様の経済効果が生まれる可能性がある。
ただ、ある東北電関係者は「まずは東通原発(青森県東通村)の安全審査対応に全力を注ぐことになる。3号機(について判断を示すの)はその後だろう」との見方を示す。
原発に恩恵を求めようとする限り、地元経済界は事業者の動向に右往左往し続ける。
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