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女川原発再稼働秒読み、地域はいま(上) 消えぬ不安、技術者の習熟度 人口減も影

女川原発2号機の原子炉に核燃料を入れる作業を進める作業員。13年の「空白」を不安に感じる住民は少なくない=9月6日

 東北電力は29日にも女川2号機の原子炉を起動させ、事実上の再稼働に踏み切る。立地地域の現状や課題を探った。

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 「情報は隠さずに出してもらいたい」。7月上旬、女川町桜ケ丘地区のスーパー経営佐藤広樹さん(43)は、自宅を訪れた東北電力社員に注文を付けた。

 社員が女川原発(女川町、石巻市)の立地地域を戸別訪問する「こんにちは訪問」。この日は約5700億円を投じて5月に完了した防潮堤整備や耐震補強など原発の安全対策工事について説明した。

■地元重視を強調

 同原発2号機の再稼働が迫る中、東北電は地元重視の姿勢を重ねて強調する。今月5日には、原発を視察した村井嘉浩知事、須田善明女川町長、斎藤正美石巻市長に対し、樋口康二郎社長が「住民が不安を感じないように作業を進めている」と力を込めた。

 同町の前宮ケ崎区長、斎藤俊美さん(86)は「電力さん」と地域の関わりについて「東日本大震災前から、それぞれの子どもが同じ学校に通い、親同士が家で一緒にお酒を飲んだりしている。(東北電は)女川に溶け込んでいる」と説明する。良好な関係は、東京電力福島第1原発事故を経ても変わっていない。

 それでも2号機の再稼働については、住民から「本当に大丈夫なのか」「事故が起きたらどうなるのか」と懸念する声が少なからず聞かれる。

■13年間の「空白」

 不安要素の一つは、技術者の習熟度不足だ。同社によると、原発の技術者約500人のうち稼働時を知るのは約4割という。

 もともと13年も停止していた機器が不具合を起こす可能性がゼロではない上、新規制基準に基づき新たに設置された設備もある。9月には、原子炉建屋内で非常用設備が計画外作動。制御棒を動かす水圧系統の弁で水漏れも発生するなど、再稼働前を前にして人為的なものを含むトラブルが相次いでいる。

 東北電は2号機と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)を持つ米サザン・ニュークリア社での研修に技術者を派遣するなど、13年の空白を埋めようと懸命だ。

 人口減少の影も忍び寄る。震災前の町の人口は1万14人(11年3月)。震災後、ハード面の復興こそ進んだものの、人口流出や少子化で現在は5852人(24年9月末)まで落ち込んだ。

 原発関連の物品納入などを請け負う女川商工事業協同組合の小野寺武則代表理事(73)によると、84社でつくる組合では、人口減を背景に人手確保に四苦八苦している企業もあるという。

 「町の人口が減れば、必然的に組合企業の従業員も減っていくだろう」と小野寺代表理事。長年、原発を支えてきた地元企業の揺らぎは、将来的に、原発の安定運転に影響を与える可能性を示唆している。

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