2024衆院選・宮城4区 新区割り決戦の背景(上) 安住陣営 早期行動で敵地に浸透
27日に投開票された第50回衆院選。小選挙区定数「10増10減」に伴う区割り変更で再編された宮城4区は、立憲民主党前議員の安住淳氏(62)が自民党前議員の伊藤信太郎氏(71)=公明推薦=ら3氏を破り、10選を果たした。石巻地方を中心とする旧5区で闘ってきた安住氏と、旧4区の塩釜市や多賀城市、黒川地域などを地盤とする伊藤氏。閣僚経験者2人が初対決し、互いの地盤に攻め込んだ激戦の実相を探った。(敬称略)
「こんなに歩いたのは30年ぶりだ。やるだけやった」
公示前の10月11日、安住は石巻市内の事務所で新区割り決定後の2年半を振り返った。
自民党の「裏金」への批判が強烈な追い風となった選挙戦。山形県境近くまで拡大した区割り変更に安住はかつてない危機感を抱いて早期から対応、他をしのぐ運動量で10選をたぐり寄せた。
この2年半、人口の6割を占める旧4区で、支持者から紹介された約2500人の家を一軒一軒自ら訪ねた。衆院解散までに全7市町村に後援会を新設。約150カ所での集会では「有権者と握手も口論もした」と言い、顔を売った。
■「どぶ板」を徹底
公示後は序盤から「どぶ板選挙」を徹底。11回の個人演説会を開き、街頭演説は1日10回ほどに及んだ。半島部や農村部を奔走し、旧4区への浸透に協力を求めた。石巻市雄勝町大須では集まった住民約80人に「落づるかもしゃね。あぶね。多賀城や利府の親戚に電話してください」と頭を下げた。
発展著しい富谷市での演説会では「東北の100年の歩みをけん引する地域」と持ち上げ「私は沿岸と農村を地盤とする『長靴を履いた政治家』。世襲議員とは違う。地元の暮らしを知る代表を選んで」と親しみやすさを印象づけた。
全12市町村で最多得票を獲得し、圧倒的な強さを見せつけた。一方、演説は政権批判に時間を割き、政策の訴えは人口減対策の外国人受け入れにとどまった。「政治とカネ」追及に一本化する党の戦術は成功したが、物価高対策や社会保障改革への具体策に乏しさを感じた有権者は少なくない。
■問われる実行力
与党が過半数割れし、安住が目指した与野党伯仲が実現、立民の野田佳彦代表は首相指名を目指す。党が掲げる「中小企業の賃上げ」「地方と農林水産業の再興」といった政策に対し、物価高にあえぐ有権者の期待感は高まり、その実行力に厳しい視線が注がれる。
宮城4区は離島から山間部まで東西約85キロに及ぶ。過疎化が著しい沿岸部、産業集積が進む黒川地域、仙台のベッドタウンと、特性と課題は多様化する。
投票終了直後の27日午後8時過ぎ、当選確実の一報が入った石巻グランドホテルで、安住は支持者を前に誓った。「金華山から七ツ森までに暮らす全ての皆さんを幸せにする責任がある。心新たに頑張らせてもらう」
(相沢美紀子)
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