放牧や平飼い、餌も工夫 仙台でアニマルウェルフェア配慮のレストランが11月11日オープン
家畜を快適な環境で育てる「アニマルウェルフェア(AW)」に沿った食材を使うレストラン「MUKU(むく)」が11日、仙台市青葉区一番町1丁目にオープンする。店を営む阿部美香さん(38)は「AWを大切にする生産者と消費者をつなぐ場にし、仙台・宮城からAWを広げたい」と張り切る。
(せんだい情報部・佐藤理史)
[アニマルウェルフェア]家畜が空腹や痛み、恐怖といったストレスを感じない快適な環境で健康に暮らし、活動できるよう配慮する考え方。1960年代の英国で発祥。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の観点から、国際的な検討課題に浮上している。
農林水産省は2023年、国際獣疫事務局(WOAH)の原則に基づき、国として初めて畜産業者向けの指針を作成。(1)豚を柵内で飼う場合は横になれる広さを確保する(2)鶏を過密な状態で飼わない(3)乳牛の尾を切断しない-などを定めた。強制力や罰則はない。
グローバル企業が対応を進め、米国ではファストフード大手マクドナルドなどが平飼い卵への移行を宣言したほか、味の素、日本ハム、明治などがAWポリシーを公表している。
一例として、大崎市田尻や南三陸町の農場で伸び伸びと放牧された豚のグリル、石巻市前谷地で平飼いされた鶏の卵で作るポーチドエッグなどを、野菜の副菜を添えたサラダボウルとして提供する。
阿部さんは「放牧豚は不自然な脂や臭みがなく、かめばかむほど味わい深い。鶏は着色された餌を食べていないので、卵の黄身が本来の淡いレモン色で野菜の色になじむ」と薦める。
食材は一般社団法人「アニマルウェルフェア畜産協会」(北海道中札内村)の認証を受けた農場を中心に、阿部さんが現場に足を運んで厳選。魚介類も環境配慮型の水産業を後押しする水産養殖管理協議会(ASC、本部オランダ)の認証を取得した女川町の養殖ギンザケなどを使う。
約3年前、家畜が過酷な環境に置かれている海外の動画を見たのが転機になった。国内で主流の狭いケージ(かご)での養鶏が、欧州連合(EU)では禁止されている実情も知り「生産効率ばかりを追い求め、動物の飼育環境をないがしろにしている」との思いが募った。
一個人がAWに沿った食生活を送るのはハードルが高い。平飼いの卵は一部のスーパーが扱うようになったが、AWに配慮した食肉や牛乳は生産量が少なく、ほとんど流通しない。
AWの普及に向け、阿部さんは一念発起。専務を務めるとび・クレーン工事業「丸雄(まるゆう)組」(若林区)の地域貢献活動を兼ね、レストランの開店を決断した。
海外のカフェをイメージした店内は1、2階に計32席を設けた。生産者の取り組みや熱意を伝える冊子を各テーブルに用意し、トイレの壁にはAWの基本原則を英文で示すなど、気に留めてもらう工夫も凝らした。
阿部さんは「おしゃれな店でおいしいものを食べたら、実はAWの食材だったという出合いもいい。動物や環境に優しい生活を心がけると、巡り巡って自分の健康にもいいはずだ」と力を込める。
営業時間は午前10時~午後9時(11月中は午後5時まで)。水曜定休。サラダボウルは1500~1800円。パスタやスムージーのほか、ビーガン(完全菜食主義者)対応の料理もある。
連絡先は丸雄組022(355)7081。
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