(1059)一人の夜のどに冷たき蜜柑(みかん)かな/小泉和貴子(1958年~)
文語体の俳句では「夜」は「よ」と読む。「よ」は「世」と音が通じるから、移ろいゆくはかない時間という感じが強くなるようだ。喉をすーっと落ちてゆく蜜柑の汁もまた、この世を変転するはかないもの。木になった…
関連リンク
- ・(1058)完璧といふ曲線の寒卵/白濱一羊(1958年~)
- ・(1057)凍蝶(いてちょう)の自愛の翅(はね)のたたみよう/池田澄子(1936年~)
- ・(1056)風呂吹(ふろふき)や母に一本顎の髭(ひげ)/石井稔(1958年~)
- ・(1055)ヨルダンの岸の焚火(たきび)の濃かりけり/有馬朗人(1930~2020年)
- ・(1054)立冬のひかりを攫(さら)ふ器かな/宮本佳世乃(1974年~)
「秀句の泉」は、俳句の魅力を伝えます。執筆は俳人の永瀬十悟さん(福島県須賀川市)、浅川芳直さん(宮城県名取市)、及川真梨子さん(岩手県奥州市)の3人。古典的な名句から現代俳句まで幅広く取り上げ、句の鑑賞や季語について解説します。