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震災語り継ぎ、心癒やす 石巻でトークイベント 遺族と学生、意義を再確認

高橋さん(右)や(奥左から)堀口さん、穂積さんらが語り継ぎの意義などを語り合ったトークイベント

 東日本大震災の被災者が、当時子どもだった世代に記憶や経験を伝える「語り継ぎ」をテーマにしたトークイベントが8日、石巻市のみやぎ東日本大震災津波伝承館で開かれた。語り継ぎを実践する遺族や学生らが登壇。「語ることで癒やされる」などと心境を語り、意義を再確認した。

 語り継ぎは、東北大が講義の一環で2022年度から取り組む。受講する学生は語り部との意見交換や活動の視察を経て、被災者から震災体験を聞き取り、自身の視点や考えを織り交ぜて他者に伝える。

 イベントでは、講義に協力した語り部で、震災で両親が犠牲になった同市南浜地区出身の高橋匡美さん(59)=塩釜市=が参加。ともに東北大3年の穂積尚子さん(20)、堀口和泉さん(20)らと活動を振り返った。

 高橋さんは、南浜地区の自宅にいた父佐藤悟さん(82)、母博子さん(73)=いずれも震災当時=を津波で失った。自分が生き残った苦悩や喪失感から、一時は寝たきりの生活が続いたが「語り部として体験を語る機会をもらい、話すことで癒やされるのを感じた」と回想。語り継ぎに参加した理由を「どんなに拙くても話さないと、次の世代にはつながらない」と強調した。

 穂積さんは仙台市出身だが地元の被害が少なく、震災の実態を学ぼうと講義に参加した。「ショッキングな話が待っていても、知ることが大事だと思って飛び込んだ。いつも元気をくれる高橋さんの人柄に引かれて活動を続けることができた」と話した。

 静岡県出身の堀口さんは、震災を学ぶために東北大へ進学した。「高橋さんと同じように、私も話すことで癒やされている。語り続け、その感覚を持ち続けることで、今この瞬間や周りの人を大切にできる」と述べた。

 イベントは石巻市の公益社団法人3.11メモリアルネットワークが主催。東北大教授時代に講義を立ち上げた福島大地域未来センター研究員の松原久さんらも登壇した。

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