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映画の街かど・2024年回顧 「室井」が帰ってきた! 圧倒「デューン」の世界観

 今年も多くの映画と出合った。想像力を刺激された映画があった。心を奪われた映画があった。考えさせられた映画もあった。2024年に見た映画を振り返る=カッコ内は観賞日=。(文)

今年、印象に残った映画(パンフレット、チラシから)

<邦画>

 今年の邦画最大の事件は「踊る大捜査線」が帰ってきたことだ。

 「室井慎次」で「敗れざる者」(10月11日)と「生き続ける者」(11月9日)の前後編で、「君たちを信じる」という室井の生き方を描いた。テレビドラマから27年、室井と出会えた人生に感謝だ。

■ヒロインで見た

 ヒロインで見た1年でもあった。清原果耶の「青春18×2 君へと続く道」(5月10日)、小松菜奈の「わたくしどもは。」(6月4日)、新垣結衣の「違国日記」(6月11日)、河合優実の「あんのこと」(6月12日)、古川琴音の「言えない秘密」(7月2日)、長澤まさみの「スオミの話をしよう」(9月14日)、黒木華の「アイミタガイ」(11月2日)、綾瀬はるかの「ルート29」(12月9日)と旬のヒロインたちがスクリーンを彩った。

 高校を舞台にした「水深ゼロメートルから」(5月9日)、「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」(8月16日)は新鮮な感動を覚えた。「水深ゼロメートルから」は高校演劇の映画化で、水のないプールでの女子高生たちの会話がリアルだった。

 「からかい上手の高木さん」(6月1日)は永野芽郁が目的だったが、監督の今泉力哉にも強く引かれた。思いを伝えられない2人の距離感、空気感を大事にする今泉監督のまなざしが温かかった。

■時代劇の復活か

 秋は時代劇が立て続けに公開された。幕末から現代の映画撮影所にタイムスリップした「侍タイムスリッパー」(10月31日)は着想の勝利だった。ほかにも「八犬伝」(11月7日)、「十一人の賊軍」(11月13日)と時代劇の復活を思わせた。

<洋画>

 洋画はこの2本に尽きる。「デューン砂の惑星PART2」(3月17日)と「オッペンハイマー」(3月29日)。

 「デューン」は圧倒的な映像力と物語力でSFの世界観を創造、観客を策略と陰謀に満ちた砂の惑星に引き込んだ。「オッペンハイマー」は3時間の大作だったが、長さを感じさせなかった。政治の前ではあまりにも純粋過ぎた天才物理学者で「原爆の父」と言われたオッペンハイマーの人物像を掘り下げた。

■衝撃、米国の内戦

 衝撃的だったのは米国の分断と内戦を扱った「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(10月6日)。近い将来を予見したような現実的な描写に戦慄(せんりつ)した。

 「関心領域」(5月30日)と「ホワイトバード」(12月8日)はナチス・ドイツ側、ユダヤ人側という正反対の視点から描いた問題作だった。

■今に突きつける

 「関心領域」はアウシュビッツ収容所の隣で暮らすドイツ軍人一家の普段と変わらない日常に違和感と恐怖を覚えた。「ホワイトバード」は孫に祖母が少女時代の体験を聞かせる話で、ユダヤ人への迫害・差別が強まる中、一人のドイツ人少年の親切がユダヤ人だった彼女を救う。親切をするには勇気がいることを教えられた。「無関心でいいのか」「見ぬふりしてすますのか」と問いを「今」に突きつけた2本だった。

 男女の恋愛をコミカルに描き、古き良き時代のハリウッド感覚にあふれていたのが「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」(7月24日)。人類初の月面着陸成功に向けたアポロ計画の舞台裏での「ボーイ・ミーツ・ガール」物語に風刺と皮肉を効かせた。

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