巳年に輝く 挑戦2025 > 東松島みらいとし機構 代表理事・引間世枝美さん(美里町)
<新電力、地域の将来描く>
東松島市の一般社団法人「東松島みらいとし機構」(HOPE)は昨年9月、従来の事業所向けなどに加え、一般家庭への電力供給事業を始めた。将来的な目標は市内全世帯への供給だ。引間世枝美(よしみ)代表理事(51)は「生活に欠かせない電力の供給を通じ、市民にとってより身近な存在になりたい」と意気込みを語る。
HOPEは2016年度「地域新電力」事業に参入。自前の太陽光発電施設や卸市場から電力を調達し、公共施設や事業所に販売している。HOPEによると、家庭向け供給の発表後、これまで約20世帯と新規契約を交わした。
ただ地域新電力でもうけを増やすだけが目的ではない。再生可能のエネルギーの地産地消が、地域の脱炭素化や災害時の電力確保などにつながることを切り口として「市民にさまざまな地域の課題に目を向けてもらい、その解決に参画してもらうきっかけづくりをしたい」という。
これまで売電の収益を活用し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する子ども絵日記コンクール、SDGs講座などに取り組んできた。卸電力市場の価格高騰など経営環境は厳しいが、プログラムをさらに充実させ、地区や世代を超えて広げていくつもりだ。
旧鳴瀬町出身。町役場に勤務後、結婚で退職し、千葉県に住んでいた11年3月に東日本大震災が起きた。家族は無事だったが、実家は大津波で全壊した。故郷への思いが募り、14年に宮城へUターン。17年からHOPEに勤務し23年8月、代表理事に就いた。
HOPEの事業は、市のふるさと納税の業務代行、市営住宅の管理など多岐にわたり、その全般を取り仕切る。「朝から晩まで仕事のことばかり考えている」と苦笑しつつ「古里の将来を描く仕事は楽しく、関われるのは幸せなこと」と充実感をのぞかせる。
今年、楽しみにしていることがある。震災で被災した農地の再生事業で、ビール向けに作付けを広げてきた大麦がウイスキーの原料に採用され、今夏にも出荷される見通しだ。「今まで一緒に頑張ってきた仲間たちと乾杯したい」
(都築理)
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