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巳年に輝く 挑戦2025 > カキ漁師 後藤大樹さん(石巻市渡波)

営業マンからカキ漁師になった後藤さん。地域の水産業を守るため奮闘している

<水産業、将来担う希望に>

 営業マンから漁業者へ-。石巻市沢田でカキ加工会社の事業承継を視野に日々仕事と向き合っている後藤大樹さん(29)。他業種から転身して4年目。「地域の象徴をなくしてしまうのは悲しい。できることを精いっぱいやり、水産業を守りたい」と意気込む。

 大阪府出身。奈良県の大学を卒業後、仙台市の建設業向けレンタル会社で営業職に就いたが、1次産業に関わりたいという思いを捨て切れず、水産業の担い手を育てる一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン(FJ、石巻市)を通じて漁師になった。

 2022年からFJの紹介で、東日本大震災を機に地域の産業を次世代につなげたいとの願いを強くしていた沢田のカキ漁師、斎藤伊平さん(68)の元で、漁業のいろはを教わる。

 親方の斎藤さんは震災後、カキの6次化を目指して燻製(くんせい)やオイル漬けを製造販売する会社を営む。後藤さんは後継者として電子商取引(EC)サイトの管理など運営に関わる。

 物おじしない性格ですぐに他の漁師とも打ち解けた。「仕事は養殖して出荷して終わりではなく、商品の発送、展示会への参加と、頭や体がいくつあっても足りないが、毎日が刺激的で楽しい」と笑う。

 後藤さんの存在は浜に好影響を与える。「震災で沈みがちがった漁業者の雰囲気が明るくなった。仕事ののみ込みが早く才能もある。自分もまだまだ現役だが、働けている今だからこそ一人前になるための手助けをしたい」と、斎藤さんは話す。

 漁業は家族経営が多く、高齢化などを背景に後継者不足や減少が続く。近年は気候変動や資源量の減少も追い打ちをかけており、後藤さんの存在は地域にとっての希望でもある。

 昨年、自分たちで育てた種ガキでも養殖を始めた。早ければ来シーズンに水揚げできるという。「思いついたことはどんどん挑戦したい。今はまだ親方の背中を追っているが、並んで歩けるようになり、将来はこの浜を支えたい」と意欲的だ。(大谷佳祐)

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