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巳年に輝く 挑戦2025 > 女川町地域おこし協力隊員・長谷川翔亮さん(女川町)

種苗生産を目指し、トリガイの研究に取り組む長谷川さん

<トリガイ種苗生産に力>

 昨年7月、女川町の地域おこし協力隊員に就任した長谷川翔亮(しょうすけ)さん(30)。高級食材として知られるトリガイの種苗生産を目指し、町内の拠点で研究を重ねる。

 「トリガイはコリコリとしておいしい」。鳥のくちばしのような形の貝は、独特の食感やほのかな甘みが魅力だ。

 すし種として需要が高い。伊勢湾や東京湾、三河湾などが主産地で、養殖は京都府や七ケ浜町などで行われている。

 黒い円筒状の飼育容器に女川湾からくみ上げた海水を入れ、その中で幼生を育てる。0.1ミリほどから約1センチに成長すれば、稚貝として出荷できるサイズになる。

 水温や水質など生育に適した条件を見つけるため容器内の海水を顕微鏡で調べ、生きている幼生の数や食べたエサの量の指標となる色あい、動きを観察する。産卵手法から幼生の成長まで根気強くデータを集める毎日に、「学びの連続」と充実感をのぞかせる。

 千葉市で生まれ、東大や米国の大学で環境学を学んだ。イチゴの植物工場を運営する米国の「Oishii Farm」などに勤務。食糧問題を考える中で、環境負荷が少ない動物性のタンパク源として二枚貝に着目した。

 二枚貝は温室効果ガスをほとんど排出せず、畜産のように陸上に飼育用の土地は必要ない。海中のプランクトンがエサになるためエサを与えなくてもいい。

 特に成長が早いトリガイは、生産計画が立てやすく品種改良のサイクルを回しやすい。海水温の上昇で水産業が深刻な打撃を受ける中、東北での養殖魚種として可能性を感じている。

 「人間はかつて狩猟をしていたが、成長の早い生き物に目を付け育てるようになった。鶏が卵を多く産むよう品種改良されてきたように、世界のタンパク源になるようなトリガイの歴史を作れたら」。養殖が広がる展望を描く。

 トリガイは28度以上の水温に耐えられないため、海水温上昇が続くことを見越し東北以北を拠点に考えていた。起業支援などに取り組む町内のNPO法人アスヘノキボウを友人に紹介され、オープンで若者が活躍している印象がある同町を事業展開の場に決めた。

 種苗生産を成功させるため、今後は設備や人員の充実も図っていく。

 「宮城、女川は水産資源が豊富で、海水温がトリガイの生育に適している。水温上昇に合った養殖魚種の種苗生産を通し、水産業界が上昇する一つのきっかけになれるよう貢献したい」
(及川智子)

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