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考えよう地域交通 > 第1部・生活の足は今 (4)接続 出島バス、期待と不安

出島大橋により陸路でつながった出島(手前)と女川町の本土。橋を使った町民バスの運行に伴い、離島航路は島への寄港を終える=2024年12月19日

 女川町の離島・出島と本土をわたす交通は、海上から陸上への移行という大きな節目を迎える。昨年12月の出島大橋開通に伴い、従来の離島航路に替わる町民バスの運行が3月にも始まる。島には自家用車や運転免許を持たない住民も多い。「少しでも便利になってほしい」。新たな生活の足への期待が高まる。

■4割免許持たず

 出島大橋が開通した12月19日、島と本土の2会場で開通式が開かれた。陸路での接続は半世紀の宿願だった。喜びに包まれた島側の会場の一角で、島民の女性(80)がつぶやいた。「橋ができても車がない。バスが走るまでは(陸路では)どこにも行けない」。

 昨年5月、町が全島民92人(当時)らを対象に調査した結果、回答者43人の4割が免許を持っていなかった。島は高齢者が半数を占める。保有者の2割は「5年以内に返納」と答えた。開通後も島民の移動を支える交通機関が欠かせないと分かった。

 開通に伴い、唯一の公共交通だった離島航路は島への寄港を終える。島は国の「離島振興対策実施地域」指定から解除される見込みで、航路の赤字分を補ってきた国や県の補助要件を満たさなくなる。

 町の試算によると、出島の離島航路を独自に運営する場合、事業費は船の維持費だけで年間1500万~2000万円。人件費などを加えると費用はさらに膨らむ。一方、町民バスは1路線800万円ほどに抑えられる。町はバスの運行にかじを切った。

 島民との意見交換を経て、町は町民バス「出島線」を新設する方針を固めた。運行は1日3往復。停留所は災害公営住宅が集まる島内の出島地区に1カ所、集落が分散する寺間地区に2カ所設置する予定。

■巡回診療終了へ

 ただ、バスが新たな生活の足としてなじむのか、確信を持てない島民もいる。

 出島地区の木村明子さん(90)は通院での利用を検討する。運転免許は持っておらず、島内の診療所は東日本大震災後に廃止に。現在は町地域医療センターが島で行う巡回診療を頼るが、バスの運行開始とともに終了する。

 「停留所は遠くないが、いつまで一人で通えるのか不安だ」。脚の持病が悪化し、自力で歩くのが年々難しくなっている。「これまでは本土に出かけると、帰りの船を待つ時間がしんどかった。他のバスや電車への乗り換えがしやすくなるといい」。

 出島線は町中心部の町役場や地域医療センター、スーパーなど最大10カ所を約50分で回るコースを計画する。町の担当者は「主要施設に接続しやすいよう調整している。念頭にあるのは島の方々の利用しやすいバスだ」と強調した。

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